見て聞いて101日間の地球一周船旅

(著) 戸山和子

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まだ一〇代の中学二年生のとき、私は山あいの田舎町で空を見上げながら広い世界を夢見ていた。狭い町しか知らなかったから、国内の他の県でも良かったはずだが、地図帳や地球儀を見て、このように大きい大陸や海があるのだから見たい、広い世界を歩きたい、という思いが湧き上がっていた。しかしそのような思いが急に叶うべくもなく、この思いは意識の底に沈んでいて、それでも時には浮かび上がってきて世界に思いを馳せていた。最近は「世界を歩いてみたかったんだ」と、過去形になって浮かんでいた。

海外への旅を夢見ながら、飛行機を忌避する気持ちと、二〇代の船旅の感動が一緒になって、私の船旅への関心は膨らんでいた。ある日の新聞に大きく船旅の宣伝が載り、豪華客船ほど高価な船旅ではなく、「ピースボート」と書かれた大きな船なのに手ごろな価格が記されていた。家族が読んでしまった後、私が切り抜いているのを見て夫が言った。「そんなに行きたいんじゃあ、気が済まないだろうから、計画を立てて一人で行ってくるといいよ」船旅は好きでない夫がそう言うのなら行けるかも知れない、思っていれば距離が縮まってくるのだ、と私の胸は期待で膨らんできた。

平成一九年二月二五日(日)、ついに私の乗った「トパーズ号」が横浜の大桟橋を離れる。大音響の心地良い音楽、乱れ飛ぶ紙テープ、そして何と多くの人々が見送りに来てくれていることだろう。「行ってきまあす」と声をそろえて言うと、「行ってらっしゃあい」と大きな声が返ってくる。ありがとう、ありがとう、私は心の中で言っている。目がうるうるしてくる。嬉しいな、ありがたいな、私は大きな喜びの中にいる

著者プロフィール:
戸山 和子

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