闇に消される原発被曝者:事故と死の危険の中で使われる作業者たちの真実の声

(著) 樋口健二

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作品詳細

[商品について]
原発は厳重に管理された「放射能を漏らさない箱」である。それは同時に、原発の内部が国民から「見えない」ことも意味している。2011年に発生した福島第一原発の事故のときも、連日の様に原発の様子が報道されたにも拘わらず、実際に起きていたことは後から明るみになった様に、問題が発生すれば甚大な被害が生じる原発の中で、何が行われ、何が起きているのか、私たちは知る術もなく日々を生きている。
本書は、「岩佐判決」をはじめとして、日々原発が稼働する裏側で何が起きているのか、内部の原発労働者、特に原発被爆者とその遺族の証言をもとに明らかにする。
原発の下請け労働者の未来は、私たち国民の未来でもある。安全神話に惑わされることなく、事実に基づいて原発問題を考える上で、現代を生きる私たちにとって必読の書である。

「目次]
原発大惨事に思う──まえがきにかえて
第1章 原発被曝裁判
国を相手の孤独な闘い──被曝者、初の岩佐訴訟
困難な被曝者探し
被曝者探しの再出発
不幸のはじまり、敦賀原発へ
原子炉内での二人だけの作業
発病
権威をふりかざす東大教授
病院を変わらせようとする動き
国会で被曝を否定する政府
先に結論のある調査委員会
訴訟にふみきる
政治的な敗訴
科学を無視し、完全犯罪に手をかす判決──科学者のみた岩佐裁判
放射線皮膚炎について
原発内部調査へ
原発内作業における被曝か
国会で追及される
提訴による国の対応
原発を裁く、裁判の争点
何のための裁判
第2章 筑豊の原発被曝者
元炭鉱に生きた人の被曝証言──筑豊にひろがる新たな悲劇
三〇年後の炭鉱
原発から炭鉱へ
証言・一──廃液タンクに落ちたら人間は買われる
放射能の溜池に足場を組む
廃液タンクから水が漏れる
証言・二──アラームメーターが鳴っても仕事は続ける
時間の経過によって検出されぬ放射能
炭鉱の閉山、建設現場、そして浜岡原発へ
アラームメーターを二個持つ
証言・三──他人の放射線計測器を持ち原発内で働く
休んだ日の民宿代は差し引かれる
放射線被曝が食中毒!
危険な作業に身を削る下請け労働者
証言・四──原発は喜んで働くとこじゃなか
第3章 被曝、そして死
倦怠感に悩まされる原発被曝者──怒りのすべてもあきらめへ
従兄の名前で原発内へ
ポケット線量計の針がとぶ
歯が欠け、髪が抜ける
お金で裁判を分断
部落解放同盟が乗り出す
事故隠しのためには証人隠しも
いっそ交通事故で死んでしまいたい
開拓集落の被曝者──国の農業政策にふりまわされ、原発へ
冷害だから原発さまさまよ
住職への道
出兵、引揚げ、そして闇屋へ
出稼ぎから山谷の住人へ
帰郷し、再び開墾
息子への思い
原発の出現、そして被曝
百姓が原発勤めではせつない
百姓は青空のもとで働くのが一番
被曝死者と遺族の証言──納得いかぬ不審な死
証言・一──痒くて、痒くて、苦しくて
証言・二──妻のキヨ子さんが語る 人並み以上の健康体があっという間にガンで
証言・三──妻の千代さんが語る せめて石塔を建ててやりたい
証言・四──妻の千鶴子さんが語る コタツにうつぶせになって死んでいきました
証言・五──息子の市郎さんが語る 原発が放射能で汚れてるなんて
第4章 労組委員長と敦賀原発内部
原子力時代が必ずくる──労組委員長と対照的な青年労働者の発言
炉心部に放射能は充満しますよ
日立の労働者で被曝に苦しんでる人はいない
現場労働者との差異
三交替勤務者の意識調査結果
定期検査中の敦賀原発内部へ──規制される写真撮影
トイレまでついてくる原電社員
フィルム一本とカメラ一台に規制される
空気の欠乏した宇宙にいる錯覚
こらえきれずにシャッターを押す
原発がある限り、下請け労働者の被曝はさけられない
黒人の原発労働者との出会い
第5章 被曝労働者とJCO東海事故
下請け親方も原発内で被曝す──ノルマをこなすため安全は無視
金はとれるが、原発の仕事は放射能を浴びる
老人にアラームメーターを持たせ、仕事を続ける
規定の被曝線量を超える
鼻血が出、体がだるくなる
被曝者同士が手をとり合わなければ
三〇年目の真実── 死亡扱いされていた!
高校生が原発内労働のアルバイト──少年たちの被曝労働
慢性骨髄性白血病の青年の死──母親・嶋橋美智子さんの証言
劣悪な原発労働での労災認定を勝ち取った故・長尾光明さんと故・喜友名正さん
「悪性リンパ腫」で絶望的な死をとげた故・喜友名正さん
「臨界事故」翌日からの東海村──住民をあざむく人権無視の世界
JCO臨界事故その後──―
第6章 核燃料輸送と核燃料サイクル基地
核燃料輸送隊を追って
警察車に守られてノンストップ
核燃料輸送の追跡
日本列島をわがもの顔で走る核燃料輸送隊
逮捕同然に扱う警察
巨大原子力半島と化す下北半島
あとがき
「三一書房」版・あとがき
「御茶の水書房」版・あとがき
「増補新版」・あとがき
著者略歴

[出版社からのコメント]
原子力発電には、必ず電力供給の問題がつきまといます。現在の私たちが生活の基盤を電力に頼る以上は、原発の問題は私たちの生活スタイルの問題と言い換えることもできます。本書では、表に出ることの少ない原発の現実の一端が明かされていますが、利便性を追及し、過剰な電力消費を促す現在の私たちの生活スタイルを見直す上でも、多くの方に本書を手に取っていただけることを願います。

【著者略歴】
樋口 健二(ひぐち・けんじ)

1937年  長野県諏訪郡富士見町生まれ
東京綜合写真専門学校卒業後、同校助手を経て、フリーのフォトジャーナリストとなる。
1969年  四日市公害を7年間に亘り追い続けた写真展『白い霧とのたたかい』を、東京、大阪、四日市、新産業都市で巡回展。
1974年  国連主催世界環境写真コンテスト・プロ部門で『四日市』が入賞。
1981年~ 講演『原発被曝の実態』を全国でおこなう。
1983~84年 写真展『毒ガス島』(隠された悲劇の島)を東京、大阪、名古屋のキャノンサロン、広島・平和記念資料館他で開催。
1985年~ 写真展『原発』を全国巡回で開催中。
1987年  ニューヨークでの第一回核被害者世界大会で日本の原発被曝実態を報告。スリーマイル島取材。
1987~88年 写真展『原発』『四日市』を台湾各地で開催。
1987年~ 世界核写真家ギルド展に『原発』を出展。ベルリン、ミュンヘン、モントリオール、トロント、ニューヨーク、フィラデルフィア、シドニー他で開催中。
1990~93年 日本の報道写真家4人展に『原発』を出展。パリ、ミュンヘン、ハノーバー他で開催。
1995年  イギリスのチャネル4がレポーターに起用、『日本の原発ジプシー』を追うテレビドキュメンタリー番組を制作・放映。
2001年  核廃絶NGO『ワールド・ウラニウム・ヒアリング』(本部・ドイツ)創設の『核のない未来賞』の教育部門賞を、日本人として初受賞。
2001年3月2日~31日
外国特派員協会ロビーとギャラリーで『被曝実態』写真展開催。
2011年  写真集『原発崩壊』が第17回平和・協同ジャーナリスト基金賞の大賞受賞。

現在、日本写真芸術専門学校副校長として、フォトジャーナリスト育成に努めている。
日本写真家協会会員、世界核写真家ギルド会員、日本広告写真家協会学術会員

[著書]
(写真集)
『四日市』 六月社書房 1972年
『原発』 オリジン出版センター 1979年
『最後の丸木舟』(共著) 御茶の水書房 1981年
『毒ガス島』 三一書房 1983年
『山よろけ』(北海道じん肺病) 三一書房 1994年
『原発 1973~1995』 三一書房 1996年
『日本の公害』全6巻の4巻に『四日市』が復刻 日本図書センター 1995年
『原発崩壊』 合同出版 2011年
『樋口健二報道写真集成 日本列島1966~2012[増補新版]』 こぶし書房 2012年
『忘れられた皇軍兵士たち』 こぶし書房 2017年
『毒ガスの島』 こぶし書房 2015年

[著書]
『闇に消される原発被曝者』 三一書房 1981年
『売れない写真家になるには』 八月書館 1983年
『原発被曝列島』 三一書房 1987年
『原発と闘う──岩佐被曝裁判の記録』(共著) 八月書館 1988年
『アジアの原発と被曝労働者』 八月書館 1991年
『これが原発だ──カメラがとらえた被曝者』 岩波ジュニア新書 1991年
『闇に消される原発被曝者[新版]』 御茶の水書房 2003年
『はじまりの場所 日本の沸点』 こぶし書房 2006年
『環境破壊の衝撃 1966~2007』 新風舎文庫 2007年
『闇に消される原発被曝者[増補新版]』 本書 2011年
『原発被ばく労働を知っていますか?』 クレヨンハウス 2012年

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