ミス・クランストンのティールーム:C.R.マッキントッシュと美覚のデザイナーたち

(著) 横川善正

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[商品について]

――19世紀イギリスのティールームでは、ウエイトレスになる前の見習たちを何と呼んだでしょうか。

1.ミス、2.ランナー、3.メイド

正解は本書「第四章 ミス・クランストンの登場」をご覧ください。

19世紀末、著しい産業化とともに色彩を失いつつあったスコットランドの都市グラスゴーに、ひときわ潤いに満ちた空間をもたらした「ティールーム」。そこはまた、労働問題や女性の自立、工業化や都市化がもたらす環境公害、家庭の喪失と人間性の疎外など、一足先に近代化を成し遂げた英国が抱え未だに解決を見ていない難問が充満する場所でもあった――。テールーム誕生の物語を通じて、英国の栄光と苦悩を鮮やかに描くもう一つの近代史。



[目次]

プロローグ

第一章 スラムとオアシス

奇跡を信じた街グラスゴー

都市の「スピリッツ」と禁酒運動

煉獄の火炎

様式の浄化者、C・R・マッキントッシュ

第二章 ティールーム誕生

都市のモラルとその装置

グラスゴー万博とヴィクトリア女王

クランストン一族

魚の目の薬と絶対禁酒

第三章 ミス・クランストンの登場

新しい世紀と芸術振興「万博」

美術館とティーハウス

結婚しても「ミス」がいい

ペティコートを着た女性たち

快楽の口実

第四章 アーティストを育てたティータイム

家庭の美化はティールームから

モダンデザインの実験室

グラスゴー・ガールズ&ボーイズ

第五章 デザイン史の舞台裏

デザインのヒントは壁面にあり

初めて芸術家のパトロンとなる、アーガイル通り

塀囲い(ホーデイング)をめぐる二人のデザイナー、ブキャナン通りのたたかい

見られる部分と想像される部分

コラボレーションの時代

第六章 ティールームの聖地「柳の喫茶店(ウイロウ・テイールーム)」

紫と銀色に染まる街

ビルの谷間の宝石箱

構造と装飾──近代と反近代

都市の倫理と遊びのしつらい

柳と生命のシンボリズム

ジャポニスムと「茶屋」

第七章 黄昏のティールーム

一九一一年グラスゴー万博

アール・デコの時代

「塹壕」という名の喫茶店

第八章 ミス・クランストンの遺産

趣味は時代を超えるか

ファンクション・ルームとして

第九章 「テイスト」のモダニズム ──味覚から「美覚」まで──

'There is no disputing about taste.'

テイストは怖(こわ)い

食が育てた「モラル」のかたち

第一〇章 紅茶は家庭から

コーヒーハウスの片隅で

茶箱とアフターヌーン・ティー

ピクチャレスクの美学とティーガーデン

ハイ・ティーはなぜ「ハイ」なのか

エピローグ

あとがき

参考文献

著者略歴



[担当からのコメント]

いつの時代も、新しく生まれるものには、その時代の社会の問題が色濃く反映されるものなのだろうと思います。伝統と道徳とカルチャーがるつぼのようになってせめぎ合うそうした場所に向けられた知の探究は、とても刺激的な思想の冒険です。イギリスに興味がある方はもちろん、そうでない方もぜひ、本書とともにそんな魅惑の冒険を楽しんでいただければ嬉しく思います。



[著者略歴]

横川善正(よこがわ よしまさ)

1949年生まれ。石川県金沢市生まれ。

金沢美術工芸大学名誉教授(英国文芸・デザイン史)、公立小松大学副学長。

 

主な著書:

『ティールームの誕生──〈美覚(びかく)〉のデザイナーたち』(平凡社)

『マッキントッシュ インテリア・アーティスト』(訳、芳賀書店)

『マッキントッシュ、建築家として・芸術家として』(訳、鹿島出版会)

『マッキントッシュ──インテリア・アーティスト』(訳、芳賀書店)

『スコットランド 石と水の国』(岩波書店)

『誰も知らないイタリアの小さなホスピス』(岩波書店)

『ホスピスが美術館になる日──ケアの時代とアートの未来』(ミネルヴァ書房)

『ホスピスからの贈り物──イタリア発、アートとケアの物語』(ちくま新書)

『スコットランドを知っていますか:英国の影に埋もれた「石と水の国」の生き方とその魅力、教えます』(22世紀アート)

『いのちをもらい、いのちをつくるホスピス:イタリアの終末介護のパイオニアたち』(22世紀アート)

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