風と光の仲で : 詩集 アルツハイマーの妻へ贈る日常抒情詩集

(著) 筒井誠司

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作品詳細

[商品について]
―「これが女房の最後の微笑みかも」そんな気がした―
カーテンを細く開けて、外の景色をのぞき見る/「寒い、寒い」と言いながら/しかし、庭の草木に霜がない/風が強くて霜がない/でも、今日は今年一番に寒い朝/落ち葉もいっぱい舞っている/ひとり身の、体の中まで、風が吹く/その時女房の声がした/家にはいない女房の声が「早く暖房、つけなさい」/写真の女房の声がした/「いつもはお前がつけてくれたよな」(本書「寒い朝」より)
アルツハイマーを発症した妻は、入院先のベッドにいる。もう治ることはなく、妻のために営農をあきらるという現実があっても、それでも妻への想いと詩情が尽きることはない――。日本の豊かな四季の中で、病が進む妻の手を取り、何気ない日常の時を見つめながら、過去と現在をやわらかな言葉で紡いた生命の詩集。

[目次]
一 冬のトマト
二 味噌汁
三 寒い朝
四 買いもの
五 歩く
六 病院の待合室
七 お歳暮
八 犬の散歩
九 木の葉
一〇 ねこ
十一 わたしたち結婚四三年の夫婦です
十二 脳梗塞
十三 すずめ
十四 さざんか
十五 ローカル線のディーゼルカー
十六 田んぼに大きな月が出た
十七 雪
十八 松竹梅と千両と孫の笑顔とお年玉
十九 介護病院のお正月
二十 孫と友達
二一 寒波
二二 近隣火災発生
二三 梅の開花
二四 節分
二五 庭の水仙
二六 菜の花畑
二七 農村の高齢化
二八 ふきのとう
二九 春一番
三〇 小春日和
三一 土手のわらび
三二 庭のぼけ
三三 うぐいす
三四 病院の散歩道
三五 母と子とつくしんぼ
三六 春雨
三七 さくら
三八 翼広げて2メートル
三九 一時帰宅の兄弟会
四〇 入院病棟変え
四一 つばめ
四二 竹藪の春
四三 芽伸びの季節
四四 茶の香り
四五 花菖蒲
四六 あじさい
四七 子猫
四八 蝉の声
四九 七十歳
五〇 笑顔をありがとう
五一 暑中見舞い
五二 雷雨
五三 秋の気配
五四 おおきな「ブタ」
五五 どうしてこんなに暑いのよ
五六 盆供養
五七 早くも実りの頃となりました
五八 病院の庭にも秋の風
五九 もしも女房が元気なら
著者プロフィール

[出版社からのコメント]
これまで当たり前のように存在していたものがいなくなったとき、そこに生まれるぽっかりとした虚ろな空間にある日常は、どんな風景を見せるのでしょうか。今を大切に生きるために必要なのは、そんな風景に目を向ける心なのかも知れません。本書に収められた言葉を通じて、生きることを感じるような、やさしい時間を過ごしていただければ嬉しく思います。

[著者プロフィール]
筒井 誠司(つつい・せいじ)

1948年静岡県生まれ。
お茶、レタス、米を中心に農業一筋50年あまり。

著書に
『はぐるま 若年性アルツハイマーの妻と私』がある。

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