苗木藩 墓からみた歴史:「廃仏毀釈」以前

(著) 千早保之

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[商品について]
―墓碑と過去帳から見える「事実」が苗木の歴史を豊かにする―
明治の初めに徹底した排仏運動を行ったことで知られる美濃国苗木藩。本書は、徹底した廃仏廃寺運動の地として知られる苗木の「運動」以前の歴史と、そこに住んでいた人々の物語の一端を、苗木に多数存在する藩主遠山家とその家臣達の墓を手がかりに、現代に再現させるものである。第Ⅰ部では調査から分かった家臣達のエピソードを、第2部では廃仏廃寺を取り扱い、第3部では高森墓地と遠山家の概容に触れる。墓碑銘と過去帳により明らかになる、知られざる苗木小史。

[目次]
はじめに
第1章 墓から見える家臣たち
1.肥後兄弟の墓発見から
高森墓地 肥後人の墓
熊本藩の御家騒動
明らかになった諸事実近藤4兄弟
晩年の伊地知(近藤)3兄弟
補 近藤作右衛門の周辺
付1 飛騨高山の肥後流人加藤光正
付2 苗木小栗氏の祖
2.家臣としての遠山氏
遠山勘兵衛
友政の妹
弟妹以外の遠山氏
1660年代で断絶
3.飛騨の三木次郎兵衛
岡村利平の卓見
岡村守彦の疑義
友政の日程
補1 三木次郎右衛門のこと
補2 三木次郎兵衛と付知
補3 三木次郎兵衛その後
4.二度の断絶 加藤氏
加藤氏の前史
本家加藤氏の断絶と再興
加藤伝八郎の自死
付1 河内の一件(1840)
付2 分家加藤氏
5.伊藤与左衛門の墓発見
6.田辺氏と結城氏
田邊氏
結城氏
田辺・結城家の墓
7.多流だった陶山家
陶山次郎兵衛(茂左衛門)
次郎兵衛と3人の息子
初期の陶山兄弟
嫡男三郎兵衛(のち茂左衛門)の系
「2男の系」 家老 陶山 家
「2男の別流」用人 陶山家
「2男の別流2」普請奉行陶山家
陶山 各家の住居
陶山 各家の墓所
8.下野の田口新兵衛
伝説・伝承
事件を示す資料
事実はどうだったか
「山論」…事件の背景1
評定で敗訴…事件の背景2
祭礼化、そして「美化」
補1 庄屋田口家
補2 正岳院過去帳
9.苗木に住んだ二人の剣客
磯畑伴蔵
長岡与一左衛門
10.水野甫淳の宝篋印塔
付 水野家文書
11.薮(やぶ)に埋もれた不明墓石群
大脇権右衛門の墓
纐纈曽兵衛の墓
河内玄意、父母・妻の墓
補1 権右衛門は河内の弟だった
補2 青山家の墓
河内の墓地に青山の墓
青山家の流れ
河内家の流れ
補 大脇氏の祖霊
付 大脇氏の有縁無縁塔
12.平作根の土屋氏2人
青山 縫の夫 切腹
石仙(せきせん) 土屋春丈(はるたけ)
付 石仙 水晶余談
13.大監察 岩瀬文七
苗木の岩瀬文七
萩原の岩瀬郡雄
岩瀬氏の系譜
補 その後の調べから
付 三郷の三傑
14.老女冨岡の名跡
冨岡のこと
麻布下屋敷の時代
霞上(楠)家
大沢三郎
大沢三郎の妻
15.美濃の小天狗 西野又太郎
西野家の出自
西野又太郎の足跡
赤報隊(嚮導隊(きょうどうたい))の西野又太郎
嚮導隊(きょうどうたい)事件以降の又太郎
明治2年の西野の消息
赤報隊後の同志たち
明治2年 西野信之助の消息
付 他の恵那の同志たち
付 家中系図(遠山文書)
第2章 苗木の寺院と排仏
1.高野山と東濃遠山氏
高野山を訪問
大永6年から 極楽院へ
江戸時代の常慶院
明治維新と常慶院
文化2年と明治元年の常慶院文書のズレ
高野山常慶院とは
奥の院の墓碑
龍王院
龍王院法印の墓碑
付 龍王権現の祭礼(8月28日)
2.初期の雲林寺住持
雲林寺の創設
惟天和尚と遠山友政
夬雲和尚(1547‐1622)
創建 中華和尚(1567‐1619)
一秀和尚(1586‐1664)
4世 玄外和尚(1598‐1669)
正岳院と寿昌院
雲林寺墓地における疑問
歴代住持の墓碑名
雲林寺墓地から
付1 苗木藩士子弟の寺子屋
付2 雲林寺の配置
3.正岳院墓地を見て
4.梅叟玄与について
法華宗 仏好寺
5.苗木の庚申堂
庚申(こうしん)堂の由来
庚申信仰とは
苗木の庚申堂
排仏廃寺と庚申堂
苗木庚申堂 二つの遺物
6.青面金剛と歓喜天
加茂郡白川町佐見(さみ)で
苗木の曽我さんと洞について
歓喜天のこと
なぜ佐見に雲林寺仏具が
7.「神仏分離(しんぶつぶんり)史料」ノート
神仏分離の概観(がいかん)
「廃仏毀釈」は「排仏毀釈」では
排仏廃寺
苗木排仏廃寺をめぐる民心
排仏廃寺の実態
石仏の破壊
墓の欠損
8.傷仏(きずぼとけ)の里 再考
苗木藩の排仏廃寺
江戸時代の排仏廃寺
維新政府の神仏判然令
他藩の排仏廃寺
苗木藩 排仏廃寺の指示
領民の受け止め
廃寺の実際
石像仏・石碑の取り除き
明治3年9月廃寺となった寺院
9.青山直道と排仏廃寺
苗木騒動(青山騒動)
青山直道「不在」の発見
集議院への出席か
青山直道と排仏廃寺
青山直道の虚像と実像
第3章 高森墓地調査
1.旧苗木藩主と家臣の墓地調査
苗木高森墓地の現状
苗木高森墓地の特色
高森墓地の調査
初期(1600年代)の墓碑
墓碑に見られる戒名
墓石の形体
高森墓地の配置
高森墓地の今後
苗木藩の墓地
ルーツを調べる方へ
2.調査から見える遠山家と旧家臣団(寸描)
館林から同行した家臣
墓碑名の古い順に
初期の墓碑をみる
遠山家廟所(市史跡)の墓碑名
市指定史跡 苗木遠山家廟所
後  記
著者プロフィール

[担当からのコメント]
日本の近代化や中央集権化への道すじの不幸な道標とも言える廃仏毀釈ですが、本書ではこの運動によって埋もれてしまった地域や人々の歴史を見事に掘り起こしていきます。廃仏毀釈や苗木の歴史に興味のある方はもちろん、そうでない方にも興味深くお読みいただける内容になっています。

[著者プロフィール]
千早 保之

・1944年生
・瑞浪高校卒
・名古屋大学文学部卒
・高校で社会科(世界史)担当
・瑞浪高校校長退職後、中津川市苗木遠山史料館調査員
・著書に『遠山友政公記』他

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