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異才の銀行家・木村匡――植民地期の台湾で日本の近代を生きた男の生涯

(著) 波形昭一

作品詳細

［商品について］
―栄光と挫折の中に日本の近代を生きた、一人の銀行家の生涯―
植民地時代の台湾経済界で成功を収め、戦前の台湾で大きな影響力を持った経済人であった木村匡。本書は、台湾経済や日台関係の歴史を俯瞰しながら、日本が封建制を脱し、近代への道を進み始めた時代を生きた「銀行家」木村匡の生涯を通じて、明治維新から１５年戦争へと至る日本の近代とは何だったのかを探っていく。日本の植民地政策や日本の内情を知るうえでも示唆に富む内容となっている。

［目次］
はじめに
第１章　生い立ちと文部省入省
１－１　生い立ちと青年期の日々
１－２　文部省入りの経緯
１－３　文部省での活動
第２章　台湾総督府官僚への転身と活動
２－１　文部省から台湾総督府へ
２－２　植民地官僚としての活動
２－３　台湾総督府を退官
第３章　三十四銀行台北支店長・台湾総支配人としての活動
３－１　銀行家への転身
３－２　不良債権整理の強行
３－３　マスメディア対応の苦心
３－４　支店経営の立て直し
３－５　練達の銀行家へ
第４章　台湾商工・台湾貯蓄両行の合同と頭取就任
４－１　三度目の台湾行き
４－２　台湾貯蓄銀行と台湾商工銀行の設立経緯
４－２－１　台湾貯蓄銀行の設立経緯
４－２－２　台湾商工銀行の設立経緯
４－３　新・台湾商工銀行の成立と頭取就任
第５章　台湾商工銀行の経営戦略と業容
５－１　木村頭取の銀行経営姿勢
５－２　積極的な店舗展開と人事異動
５－３　内地コルレス網の開拓・拡張
５－４　預金・貸出金の増進とその構造
５－４－１　預金
５－４－２　貸出金
５－４－３　本支店間の資金調整
５－５　損益状況と利益金処分
第６章　銀行合同の失敗と頭取退任
６－１　銀行合同の経緯と合同後の経営不振
６－２　援助問題と巨額不良債権の発覚
６－３　巨額不良債権の整理と頭取退任
第７章　台湾における社会活動 ―大正協会を事例に―
７－１　大正協会の設立と台湾同化会問題
７－２　大正協会の設立経緯と活動
７－３　台湾議会設置請願運動と大正協会
第８章　帰郷後、晩年における社会活動
８－１　帰郷、桃生郡北村村長に就任
８－２　（株）仙都ビルの設立と三越の仙台進出
８－３　吉田高等女学校初代校長に就任
８－４　東北振興運動から国民精神総動員運動へ
８－４－１　宮城県町村長会長として東北振興運動の舵とり
８－４－２　桃生郡連合青年団長として国民精神総動員運動へ
第９章　驚異の著述・論述活動
９－１　自由民権運動期の論説
９－２　『森先生伝』に込めた敬慕の情
９－３　「朗読演説」と著述・論述活動
おわりに
木村匡　著述・論述目録
【著者紹介】

［担当からのコメント］
本書が書かれた最初の動機は「銀行家、って何だろう」という率直な疑問だったそうですが、皆さんは「銀行家」と聞いてどんな人を想像しますか。銀行マンではなく、金貸しでもなく、銀行家。木村匡という、この疑問を解くにうってつけの人物の生涯は、経済、歴史、国際関係のどの視点からも興味深い内容になっています。ぜひ、ご一読ください。

【著者紹介】
波形　昭一（なみかた　しょういち）

（経歴）　
1941年、新潟県十日町市生まれ。早稲田大学大学院商学研究科博士課程単位取得を経て70年獨協大学経済学部専任講師、82年教授。87年、商学博士（早稲田大学）。2012年、獨協大学を定年退職、名誉教授。

（主要著書・論文）　
『日本植民地金融政策史の研究』（早稲田大学出版部、1985年）、『近代アジアの日本人経済団体』（編著、同文舘出版、1997年）、『近代日本の経済官僚』（共編著、日本経済評論社、2000年）、『民間総督三好徳三郎と辻利茶舗』（編著、日本図書センター、2002年）、「植民地台湾における地場普通銀行の経営分析―1905～1913年の嘉義銀行と彰化銀行を事例に―」（『獨協経済』第86号、2009年）、「第一次大戦後の金融危機と植民地銀行―昭和金融恐慌下の台湾総督府と島内動向の視点から―」（和田春樹ほか編『岩波講座　東アジア近現代通史４』岩波書店、2011年）。