中越地震のメッセージーー大地が語る「恵みと自然災害」

(著) 高濱信行

Amazon

作品詳細

[商品について]
―私たちは自然の営みの中にいることを忘れてはいけない―
2004年10月23日夕刻におきた中越地震は、同年7月の豪雨と年末の豪雪と併せ中越地域に大きな被害をもたらした。しかし一方で、こうした脅威は新潟の地に自然の豊かさという恵みをもたらしてもいる。私たち人間の歴史は、そうした自然の営みがもたらす脅威を乗り越え、恵みによって生活を豊かにしてきた日々の積み重ねによって生み出されてきたと言ってもいい。本書では、そうした視点から中越地震に焦点をあて、地表での現象や歴史的側面、防災の観点から総合的に解析・研究を行った成果をもとに、中越地震がもたらすメッセージを読み解いていく。地震大国に住む日本人必読の書。

[目次]
はじめに
第一章 中越地震と被害の特徴
一、地震の特徴
強震分布
震度と計測震度計
地震観測網の整備
地震観測網の弱点
二、被害の特徴
六七人はなぜ犠牲となったのか
エコノミークラス症候群
中越は新潟の大動脈
高い被災率と高い避難率
中山間地が孤立した
高齢化・過疎化と中山間地の暮らし
被害調査で見たものは
建物被害の分布を調べる
建物被害は偏在している
激震ゾーン
三、地震による地盤災害
長岡市妙見町の岩盤崩落
山古志地域の斜面崩壊・地すべり
旧流路堆積物による被害の集中
段丘地域での被害
液状化による建物被害
液状化による農地被害・堤防被害
第二章 中越地震発生の背景―新潟の大地の成り立ちと中越地震―
一、世界有数の変動帯フォッサマグナ
フォッサマグナの海
海から陸、そして山に―変動の転換
越後平野は沈降を継続
現在の地形をつくる変動「山は高く、低地は低く」
二、「信濃川地震帯」
新潟地域の活断層(*)
三、信濃川の隆起と活断層―河成段丘に学ぶ―
河成段丘
火山灰から時代と変動量を計る
河成段丘に記録された信濃川の変動の歴史
ブロック(地塊)構造
信濃川の蛇行と山本山の隆起
現在も続く山本山の隆起
河成段丘に学ぶ
四、越後平野の沈降―古代からのメッセージを探る―
湖底に沈んだ縄文遺跡―青田遺跡
九世紀の地震による沈降
鎧潟
東囲遺跡と亀田郷
田潟と大潟の出現
約五〇〇〇年前の縄文遺跡が地下一九mに埋没―味方村排水機場遺跡―
信濃川・阿賀野川河口域―渟足柵を探る―
越後平野大地変動の時代
五、中越地域の地質構造と直下地震
東山背斜構造
褶曲地域・地震分布・地質構造
地表と地下深部
「古傷が再活動」
墓石被害調査―「異常震動帯」
「異常震動帯」とは
越後平野地下でのブロック(地塊)構造―一九九五年新潟県北部(福島潟)地震
第三章 一九年ぶりの豪雪が被災地を襲う
一、震災直後の冬の気象と積雪の特徴
二〇〇四―〇五年冬期は「暖冬多雪」だった
被災地に集中した降雪
ざらめ化が急速に進んだ積雪
二、中越地震と豪雪がもたらした複合災害
地震で傷んだ斜面から全層雪崩が多発
融雪による閉塞河川の氾濫と土砂崩れ
地震で被災した建物が雪で倒壊
消雪パイプの破損で雪に埋まった道路
三、中越地震が真冬に起こっていたら
四、一九年ぶりの豪雪を終えて
第四章 中山間地農業と土砂災害
一、地すべり多発地帯とその背景
二、地すべり現象の「功と罪」
地すべり地に人が集まる―魚沼丘陵の集落と地すべり
地すべり現象の両面性
山地の水がめ
越後平野の開発・苦闘の歴史
三、中山間地農業と環境・国土保全―中山間地の復興―
スイスの山地農業と国土保全
先進国の食料政策
中山間地の復興
都市と農村の交流
第五章 災害は「弱点」を的確に突いてくる
一、地盤の弱点
盛り土地盤の被害
大規模造成地の被害―長岡市高町団地
危険宅地
丘陵部の谷埋め盛り土の被害―長岡市悠久山周辺
旧河道部の谷埋め盛り土の被害―見附市市街地
トンネル埋め戻し部の被害―十日町市ほくほく線
道路盛り土の崩壊
繰り返される人工地盤災害
宅地造成
自然地盤の「飛び地的」被害―刈羽村の被害
自然地盤の「弱点」とは
二、構造物の弱点
三、人・社会の弱点
第六章 新潟の地震災害予測
一、新潟における地震発生の予測
政府の地震調査研究推進本部による予測
越後の古地震履歴―「温故知新」
歴史地震―文字史料
遺跡からのメッセージ
文字史料と地層の記録の検証と補完
地質時代のメッセージ
地質現象の「反復性」
二、新潟における地震災害・被害の予測
土砂災害
液状化災害
「ゼロメートル地帯」の浸水被害
地盤の沈降・水没被害―「新潟」という地名
積雪期の地震
三、防・減災対策
災害と水(井戸・湧水の利用)
地震と下水道
マイコンメーターと火災
新潟地震、阪神・淡路大震災、そして中越地震の教訓は
安全で有効な土地利用とは
災害教育―災害を風化させないために―
稲むらの火(一九三七年=昭和一二=文部省発行 小学国語読本 巻十:原文)
自分の命は自分で守る
■用語解説
資料 気象庁震度階級関連解説表
資料 新潟県合併市町村一覧
参考文献(五十音順)
あとがき
■著者略歴

[担当からのコメント]
本書を読んでいると、防災は自然と共に生きていくという意識があって初めて実効性を持つのだろうと思わされます。私たちにできることは自然からのメッセージを受けとり学び続けること。そのための一書として、多くの方に本書をご活用いただければ嬉しく思います。

[著者略歴](執筆時2006年当時のものです)

 高濱 信行(たかはま のぶゆき)
 1945年生まれ。新潟大学大学院理学研究科修士課程修了。
 新潟大学災害復興科学センター・教授。理学博士。第四紀・災害地質学。

 風岡  修(かざおか おさむ)
 1960年生まれ。大阪市立大学大学院理学研究科後期博士課程修了。
 千葉県環境研究センター地質環境研究室・主席研究員。理学博士、地質汚染診断士。Urban地質学・環境地質学。

 卜部 厚志(うらべ あつし)
 1966年生まれ。新潟大学大学院自然科学研究科博士課程修了。
 新潟大学災害復興科学センター・助教授。博士(理学)。第四紀・災害地質学。

 河島 克久(かわしま かつひさ)
 1962年生まれ。北海道大学大学院理学研究科修士課程修了。
 新潟大学災害復興科学センター・助教授。博士(理学)、気象予報士。雪氷学・自然災害科学。

 和泉  薫(いずみ かおる)
 1950年生まれ。北海道大学理学研究科修士課程修了。
 新潟大学災害復興科学センター・教授。理学博士。雪氷防災学。

 安井  賢(やすい さとし)
 1956年生まれ。新潟大学大学院自然科学研究科後期博士課程修了。
 有限会社新潟基礎工学研究所・取締役。博士(理学)、技術士(応用理学)。土木地質学・古生物学。

新刊情報