スウェーデンボルグと明治の思想人

(著) 瀬上正仁

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作品詳細

[商品について]
―日本の初代文部大臣として知られる森有礼ですが、彼が2度の渡米後に福沢諭吉などと結成した啓蒙的学術団体の名前は何でしょう。
1. 明六社 2. 木曜会 3. 水平社
正解は、本書「はじめに」をご覧ください。

仙台が生んだ明治の思想家・新井奥邃(おうすい)。彼の名は必ずしも知られているわけではないが、その影響力は日本史上決して無視できるものではない。本書は奥邃の思想をスウェーデンボルグ神学の立場から読み解き、彼に影響を受け、日本史の表舞台で活躍した森有礼(初代文部大臣)や田中正造のキリスト教思想の根底に流れるスウェーデンボルグ的要素を紐解いていく。ここにあるのは、奥邃を源泉とするもう一つの日本キリスト教史だ。

[目次]
はじめに
第一章 新井奥邃の生涯
奥州仙台藩の明治維新
奥邃の幼年・青年時代
戊辰戦争と奥邃
玉虫左太夫(一八二三〜六九)
キリスト教との出会い
森有礼との邂逅から渡米まで
ニューヨークの「新生同胞教団」
トーマス・レイク・ハリスについて
アメリカでの奥邃、そして帰国
帰国直後の奥邃
奥邃の「謙和舎」と「大和会」
奥邃の晩年と死
第二章 新井奥邃の思想とスウェーデンボルグ神学
奥邃の原点に存在していたスウェーデンボルグ神学
奥邃の「神戦」と「新生」の思想
奥邃の「有神無我」の思想
奥邃の「私我」についての思想
奥邃の「三位一体」と「聖霊」についての思想
奥邃のキリスト教会批判
奥邃の「日用常行」の思想
奥邃の「父母神」の思想
奥邃の「二而一」の思想
奥邃の「愛」の思想
奥邃の「度」の思想
奥邃の言う「超自然」と「滑生気」
奥邃の聖書・聖言観
奥邃の儒教・仏教観
奥邃とスウェーデンボルグの思想上の相違点について
第三章 新井奥邃と一九世紀アメリカの宗教界
アメリカ時代の奥邃とその思想形成の謎
第二次大覚醒時代(一八〇〇~三〇年代)
スピリチュアリズム〔心霊主義〕の興隆(一八三〇~五〇年代)
アンドリュー・ジャクソン・デービスの「調和哲学」
一九世紀アメリカの新教会の状況
スウェーデンボルグ主義者だったリンカーン大統領
新井奥邃の思想形成についての一考察
(付)アメリカのニューチャーチ史
第四章 新井奥邃のスウェーデンボルグ観
スウェーデンボルグについて書き遺さなかった奥邃
奥邃のスウェーデンボルグ批判?
エドウィン・マーカムへの書簡
霊界のスウェーデンボルグ
スウェーデンボルグとその時代性
真理の外観は常に変化する
奥邃の「新教会」批判
「天的」なレベルを目指した奥邃
奥邃のスウェーデンボルグ批判の真意
奥邃のスウェーデンボルグ観
第五章 日本初代の文部大臣、森有礼
新井奥邃から森有礼へ
森有礼とローレンス・オリファント
森有礼とトーマス・レイク・ハリス
明治維新の頃の森有礼
「明六社」における森有礼の啓蒙活動
外交官としての森有礼
「日本政府代議政体論」に見る森有礼の国家観
日本初代の文部大臣としての森有礼
「伊勢神宮不敬事件」と森有礼の死
森有礼亡き後の日本
第六章 森有礼の宗教思想と新井奥邃
森有礼に見え隠れするキリスト教の影
森有礼の思想とスウェーデンボルグ神学
(1)太陽神アマテラス
(2)機能的国家論
(3)政体・官吏論
(4)歴史観
(5)宗教観
(6)結婚観
(7)教育観
互いに響き合う森有礼と新井奥邃
第七章 明治期のキリスト教と森有礼
明治期日本におけるキリスト教の受容と変容
日本におけるキリスト教の受容
明治初期の日本キリスト教の特徴
熊本バンドと森有礼
札幌バンドと森有礼
明治期キリスト教の受容と変容に果たした森有礼の役割
東北学院史に見る、押川方義と外来キリスト教派との対立
押川方義のその後
第八章 田中正造と足尾銅山鉱毒事件
反骨の人、田中正造
足尾銅山鉱毒事件
田中正造の戦い〈第一期〉国会議員としての活動と川俣事件
田中正造の「明治天皇直訴事件」
田中正造の戦い〈第二期〉谷中村入村と谷中村買収反対運動
田中正造の戦い〈第三期〉天国に行く道普請(ぶしん)~自らとの戦い
鉱毒問題のその後~谷中村の偉大な預言者たち
第九章 田中正造の宗教思想と新井奥邃
田中正造の晩年の思想に見られる宗教性
田中正造の晩年の師であった新井奥邃
田中正造の晩年の信仰と新井奥邃のキリスト教思想
思想家の奥邃、実践者の正造
田中正造の晩年の信仰に生きていたスウェーデンボルグ神学
(付)東北帝国大学の創設と足尾銅山鉱毒事件
第十章 明治以降のスウェーデンボルグ受容史(電子書籍版初出)
奥邃の「謙和舎」の門人たち
「謙和舎」の舎生以外で奥邃の影響を受けた著名人
田中正造晩年のもう一人の師 岡田虎二郎
わが国におけるスウェーデンボルグ神学受容史 その後の展開
(付)NHK朝ドラ「なつぞら」について
第十一章 日本人の宗教意識とスウェーデンボルグ神学
明治初期のキリスト教とその今日的意義
明治初期のキリスト教に見る、その日本的変容
日本における仏教の受容と変容
外来宗教の変容をもたらした日本人の宗教意識とは?
日本人の宗教意識と神道
神道と新井奥邃の思想との類似について
神道思想とスウェーデンボルグ神学
スウェーデンボルグが伝えた「アジアの古代教会」
人類の新しい宗教を導くもの
新井奥邃が理想とした未来世界
恩讐を越えて
おわりに
電子書籍版 あとがき

[出版社からのコメント]
歴史(の解釈)は固定的なものではなく、文献の新発見などの影響を受けながら、繰り返し訂正が重ねられるダイナミックなものです。しかし、一般人にあっては馴染みのあるごく一部の教科書や通史によってイメージが固着されてしまいます。本書を読むことで、そのような沈黙した歴史から自身を引き離し、歴史のダイナミズムを思う存分味わうことができます。

【著者紹介】
瀬上 正仁(せのうえ・まさひと)

昭和29年に宮城県塩釜市で生まれ、仙台市で育つ。
昭和55年に山形大学医学部を卒業後は、仙台市内で整形外科の診療に従事、専門の脊椎外科手術例多数。
平成25年に仙台市内に「瀬上整形外科医院」を開業、現在に至る。
日本整形外科学会の脊椎外科認定医。
高校時代から神道家の勝又正三師に師事し、師亡き後は師の「魚と水の会」を継承。医業の傍ら、神道を主体とした東洋思想とスウェーデンボルグ神学との関連について研究を重ねている。
日本スウェーデンボルグ協会(JSA)創設当時の運営委員。

〈著書〉
『知られざるいのちの思想家 新井奥邃を読みとく』(分担執筆、春風社、2000年)
『明治のスウェーデンボルグ─奥邃・有礼・正造をつなぐもの』(春風社、2001年)
『魚と水─ある天才宗教家 霊的体験の記録』(編著、著者は勝又正三師、春風社、2001年)
『仏教霊界通信─賢治とスウェーデンボルグの夢』(春風社、2003年、初版)
『スウェーデンボルグを読み解く』(分担執筆、春風社、2007年)
『宮沢賢治とスウェーデンボルグ─日本仏教の未来を見つめて』(22世紀アート、2018年、電子書籍)

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