奇跡の「走り拭き」――知的障がい者教育への挑戦

(著) 岡本美智子

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作品詳細

[商品について]
――両手で雑巾を床につけ走って掃除する「走り拭き」。この様子が描写されているスタジオジブリのアニメ映画は次のどれでしょうか。
1.魔女の宅急便、2.千と千尋の神隠し、3.となりのトトロ
正解は、本書「『走り拭き』って何?」をご覧ください。
昭和の時代はどこの学校でも行われていた「走り拭き」、一見たんなる雑巾がけとも思えるこの習慣は、実は子どもたち、中でも重度の知的障害を持つ子どもの自立教育に大きな効果を持っている――本書は、55年にわたって知的障害者教育の現場に携わってきた著者が、その困難な道のりの中で見いだした幾筋かの奇跡の記録である。千葉光の村授産園での取り組みを中心に、「走り拭き」を基本とする生活教育の実践を、数々のエピソードを交えながら具に語る。障害の壁を乗り越えて子どもたちが社会で自立していく、その無限の可能性を引き出す教育の真髄がここにある。

[目次]
まえがき
Ⅰ このままでいいのか
ある施設の衝撃
泣きっぱなしの卒業式
返事がないのが元気の証拠
江戸川区の中小岩小学校へ
教室の断捨離
マニュアルを一からつくる
ガリ切りは毎晩廊下で
「一年後を見ていてください」
歩いて掃除しての一日
お面作りは訓練の宝庫
Bくんのスウェーデン刺繍
卒業式の練習は一学期から
平井東小学校へ
大騒ぎの高尾山登山
そして新たな挑戦の場へ
Ⅱ 千葉光の村授産園で
ここまでひどいとは
プラスの連鎖が始まる
親も驚く技術力のパン・紙器クラス
運動会へ向かう集中力
「私たちにはとてもできません!」
二時間四十八分でフルマラソンを完走
成人式は白い灯台の下で
涙とニコニコ顔の卒業式
何はともあれ清潔第一
洗濯板でゴシゴシと
「走り拭き」って何?
「走り拭き」で芽生える公共心
目標はラジオ体操
三年目でフルマラソンを完走
三十歳以上からでも体力は伸びる
跳び箱が跳べた
ゆりかごとうさぎ跳び
「走り拭き」ダイエット
暮らしを楽しむ
料理に挑戦
一文字、一針ごとの成長
テレビはニュースと天気予報を
人気の和太鼓演奏
花の名前を知る幸せ
三十八項目のセルフチェック
Ⅲ 生涯、社会の中で 生きつづけるために
がんばれ、卒業生たち
家族の本当の幸せのために
五百五十人を超える「友の会」の支え
すべての教え子の記録を保管
「光の村に行って、相談する!」
終 章
雨の運動会
トイレ掃除にあこがれて
「無価値の価値」のレポート
いくつになろうが教師と教え子
あとがき
著者略歴

[担当からのコメント]
子どもたちに本当に必要なものは何か、それを見極めて実践するというのは決して簡単なことではありませんが、そのたどり着いた先にあったものが「走り拭き」であったというのは大変興味深いことです。その意味で本書は、知的障害を持つ子どもたちをテーマにしていますが、教育とは何かということを考えるうえで示唆に富む内容になっています。

[著者略歴]
岡本 美智子(おかもと・みちこ)

千葉光の村授産園理事長。昭和15(1940)年5月16日、旧満州奉天市生まれ。東京学芸大学卒業。市川市立養護学校(現・市川市立須和田の丘支援学校)、東京都江戸川区立中小岩小学校、江戸川区立平井東小学校をへて、平成2(1990)年より障害者支援施設千葉光の村授産園(設置運営:社会福祉法人首都圏光の村)に勤務。知的障害者が自立した人生を送れるよう、「走り拭き」を基本とする徹底した生活教育をもとにした独特の教育メソッドを構築。55年にわたり、障害者教育の第一線で活躍する。厳しくも真の慈愛の精神をもつそのぶれない教育姿勢は、重度の知的障害者に多くの奇跡的な成果をもたらしている。

千葉光の村授産園のお問い合わせ先
住所:千葉県千葉市若葉区小間子町1‐8
電話:043‐228‐5300
メール:jyu3en@hikarinomura.com

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