地方都市再生の条件は何だろうー阪神・淡路大震災からの経済復興について考えるー

(著) 藤本建夫

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[商品について]
―神戸から日本の地方経済の未来が見える―
明治から戦前にかけて造船業を中心として急速に発展した神戸経済は、戦後高度成長期の中で金属・機械・家電・化学といった工業の波に乗り損ねて衰退が進み、行政が経済活動の前面に出てくるようになってくる。それはプラザ合意以降に活発化した地方行政の積極的経営の動きの一つであったが、一度動き始めた公共事業という巨大な歯車はバブル崩壊や大震災の直撃により神戸の都市経営をますます窮地に追い込んでいくこととなった。1980年代の繁栄からバブル崩壊、阪神淡路大震災とその後の復興の停滞と神戸という一地方都市経済に密着してその四半世紀を追いながら、日本の地方経済と政治が抱える問題を見つめた20世紀の日本を総括する示唆に富む研究。

[目次]
第1章 未来の「海の文化都市」ポートアイランド
1 ポートピア'81
2 高度経済成長期の神戸経済
〔中核的重工業発展の限界〕
〔地場産業の繁栄〕
3 神戸経済にとっての神戸港の意味
第2章 宮崎市政 ――「神戸市株式会社」――
1 積極的都市経営――起債主義と外郭団体
2 鉄からファッションへ,そして外郭団体の成長
3 アジアのマザーポート,そして観光都市神戸
4 神戸市経済に占める公共分野の拡大
第3章 日米貿易摩擦とバブル経済
    ――神戸経済にとっての意味――
1 プラザ合意
2 前川レポート
3 日米構造問題協議からFAZ法へ
4 歴史の大転換
第4章 阪神・淡路大震災
1 大震災の悲劇と被災状況
〔甲南大生の恐怖の瞬間〕
2 大震災被害データ
〔人的被害〕
〔住家被害〕
〔ライフライン〕2)
〔交通システム〕
3 行きばのない地場産業
〔ケミカルシューズ〕
〔灘酒造業〕
〔小売業〕
4 沈む国際貿易港
5 神戸を去る大企業
〔川崎重工業〕
〔住友ゴム工業〕
〔ダイエー〕
〔神戸製鋼所〕
6 震災失業
7 メディアに翻弄される大衆社会
  ――震災報道からオウム事件へ――
第5章 2つの大震災と金融政策
1 関東大震災と金融問題
2 阪神・淡路大震災と日銀の対応
3 復興融資
第6章 国家の復興政策 ――復興対策本部と復興委員会――
1 復興庁案の挫折
2 復興対策本部と復興委員会
〔復興対策本部〕
〔復興委員会〕
3 上海長江交易促進プロジェクト
第7章 国会における復興予算審議
    ――震災復興からオウム事件・円高対策へ――
1 1994年度第2次補正予算――復興債をめぐる攻防
2 赤字国債容認の論理と 1994年度第2次補正予算の成立
3 1995年度第1次補正予算をめぐる攻防
  ――選挙,円高,景気政策の前に霞む震災復興予算――
〔増税案はなぜ消えたか〕
〔1995年度予算案組み替え問題〕
〔幕間狂言「公共事業費5%留保」の結末〕
〔1995年度第1次補正予算案の成立〕
〔オウム事件と衆議院予算委員会〕
第8章 金融・経済危機下の被災地経済の停滞
1 関東大震災後に襲った金融恐慌
2 住宅金融専門会社,アジア危機,そして金融危機
3 震災から3年の被災地経済
4 神戸港,FAZ法およびアジア危機
第9章 あだ花の産業復興政策
1 ポーアイⅡ期
2 エンタープライズゾーン構想に立ちはだかるFAZ法
3 夢物語のKIMEC構想
4 3年経過後の「阪神・淡路震災復興計画推進方策」
5 1998(平成10)年度兵庫県予算における
  産業復興関連予算の特徴
第10章 大震災から10年
1 震災から10年の被災地経済の現実
2 復興10年の総括検証
3 被災地行政の財政状況
終章 政治家に問われる「情熱,責任感,判断力」
あとがき
参考文献
〈著者紹介〉

[担当からのコメント]
地震や火山、台風など日本は災害の多い国ですが、そうした中で経済を維持し発展させていくにはどうすれば良いのか、これまであまり考えられてこなかったこうした視点は今後の日本経済が立ち直るために重要になってくるのではと思います。そのための一助として、本書を多くの方にご活用いただければ嬉しく思います。

[著者紹介]
藤本建夫(ふじもとたてお)
1974年 京都大学大学院経済学研究科博士課程単位修得
現在 甲南大学名誉教授,経済学博士
主要業績
『ドイツ帝国財政の社会史』(時潮社,1984年)
『東京一極集中のメンタリティー』(ミネルヴァ書房,1992年)
『甲南大学の阪神大震災』(森田三郎と共編著,神戸新聞総合出版センター,1996年)
『1995.1.17.を証言する』(森田三郎と共編,甲南大学阪神大震災調査委員会,1996年)
『復興の政治経済学』(編著,晃洋書房,1997年)
『阪神大震災と経済再建』(編著,勁草書房,1999年)
『脳卒中リハビリ奮戦記』(藤本芳子と共著,ミネルヴァ書房,2003年)
『ドイツ自由主義経済学の生誕――レプケと第三の道――』(ミネルヴァ書房,2008年)
『何が地方都市再生を阻むのか――ポートピア'81,阪神・淡路大震災,経済復興政策――』(晃洋書房,2010年)
『経済学の地下水脈』(編著,晃洋書房,2012年)
『実業家平生釟三郎,日本の教育および経済社会を“liberate”する――日記を通して見えてくる戦前日本の実像――』(甲南大学出版会,2023年)
H.ベーメ『現代ドイツ社会経済史序説』(大野英二と共訳,未來社,1976年),など.

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