大学1・2年生のための化学――演習問題と解説で基礎を身につける

(著) 片桐晃

Amazon

作品詳細

[商品について]
――水素放電管から発する光を分光器で調べると、可視領域には何本のスペクトル線が観測されるでしょうか。
1.3本、2.4本、3.5本
正解は本書「問題 8.2 水素原子スペクトル ――― バルマー系列」をご覧ください。
化学は具体的な物質の性質や反応をあつかうが、学習の途中では化学熱力学におけるエントロピーや原子・分子の構造における波動関数など、抽象的な概念に出会うことが少なくない。こうした概念の理解と学習には、具体的な化合物や数値をつかった計算をしてみることが有用である――大学一・二年次の学生や化学の基礎を理解しようとしている人々のための問題に、基礎に遡って詳述した解説を付した基礎化学演習書として最適の一冊。

[目次]
1. 化合の法則,モルの概念
 1.1 倍数比例の法則
 1.2 相互比例の法則
 1.3 気体密度による分子量の測定
 1.4 結晶の密度と格子定数からのアボガドロ数の算出

2. 気体の性質
 2.1 気体分子の衝突数
 2.2 気体の流出
 2.3 マックスウェル・ボルツマンの分布関数
 2.4 月の大気
 2.5 ボイル温度とファンデルワールスの状態式
 2.6 臨界定数とファンデルワールス定数
 2.7 気体の粘性係数

3. 化学平衡と相平衡
 3.1 水性ガス平衡
 3.2 アンモニア合成反応
 3.3 弱酸の解離平衡 ――― ブロムフェノールブルー
 3.4 炭酸の解離平衡
 3.5 ジアンミン銀イオンの生成
 3.6 二成分系混合物の気液平衡

4. 熱化学
 4.1 気体の膨張に関するジュールの実験
 4.2 気体の等温可逆膨張
 4.3 ジュール・トムソンの実験
 4.4 水の蒸発における内部エネルギーとエンタルピーの変化
 4.5 ヘスの法則
 4.6 標準エンタルピー変化
 4.7 反応熱の測定 ――― 炭化ケイ素のフッ素化
 4.8 反応熱の温度変化
 4.9 硫酸の溶解熱

5. エントロピーと自由エネルギー
 5.1 熱機関の効率
 5.2 熱ポンプの効率
 5.3 スターリング機関
 5.4 蒸発エントロピー――― トルートンの規則
 5.5 過飽和水蒸気の凝縮におけるエントロピー変化
 5.6 湯と水の混合におけるエントロピー変化
 5.7 鉄の絶対エントロピー
 5.8 化学反応に伴う系のエントロピー変化
 5.9 化学反応に伴う全エントロピー変化
 5.10 化学反応に伴うギブズ自由エネルギー変化
 5.11 NO、O2、NO2の平衡反応の平衡定数
 5.12 平衡定数の温度依存性 ――― ディーコン反応
 5.13 熱力学的状態方程式
 5.14 液体と蒸気の平衡 ――― クラウジウス・クラペイロンの式

6. 酸化還元反応と電気化学
 6.1 酸化還元反応の反応式
 6.2 標準単極電位と酸化剤・還元剤の強弱
 6.3 水素・酸素燃料電池の標準起電力
 6.4 燃料電池のエネルギー変換効率
 6.5 クラーク電池の起電力の温度依存性
 6.6 高温型 Na-FeCl2 電池の起電力
 6.7 起電力と平衡定数
 6.8 酸化還元滴定
 6.9 ギ酸水溶液の電気伝導と電離平衡

7. 反応速度
 7.1 一次反応の速度式 ――― 1, 2-ジクロロエタンの熱分解
 7.2 速度定数の温度依存性
 7.3 二次反応の速度式 ――― NO の分解反応
 7.4 二次反応の速度式 ――― NO と O3 の反応
 7.5 零次、一次、および二次反応の半減期
 7.6 ラジカル連鎖機構

8. 原子の電子構造
 8.1 一電子原子に関するボーアの理論
 8.2 水素原子スペクトル ――― バルマー系列
 8.3 特性X線とモーズリーの式
 8.4 箱の中の粒子の波動関数
 8.5 波動関数の直交性

9. 化学結合
 9.1 ボルン・ハーバーのサイクル
 9.2 イオン結晶の格子エネルギー
 9.3 一、二次元NaCl結晶のマーデルング定数
 9.4 水素分子イオンのσ1sオービタル
 9.5 水素分子イオンのσ*1sオービタル
 9.6 炭素のsp3混成軌道

10. 核化学
 10.1 原子核反応の反応式
 10.2 炭素14のβ- 崩壊
 10.3 フッ素18の陽電子放出(β+ 崩壊)
 10.4 崩壊定数と半減期
 10.5 ラジウム226のα崩壊
 10.6 ウラン235とウラン238の存在比からの地球年齢の推定
 10.7 放射性崩壊系列における永続平衡
 10.8 電子対生成と消滅

付録
1. ウェストン電池の起電力の一次および二次温度係数
2. 水素分子イオンのσ1s波動関数
索引

[担当からのコメント]
本書を活用するためには最低でも理系大学入学レベルの数学と化学の知識が必要ですが、そうした知識がない方が問題文や解説の分かる箇所だけを読んでも、それなりに楽しめる本になっています。化学の楽しさと奥深さを味わえる作品として、おすすめの一書です。

著者略歴
片桐 晃

 1941年 京都市に生まれる
 1964年 京都大学工学部工業化学科卒
 1966年 京都大学大学院工学研究科修士課程修了
      住友化学工業(株)勤務を経て、京都大学工学部、
      教養部、総合人間学部、人間・環境学研究科、
      エネルギー科学研究科において教育・研究に従事
 2005年 京都大学名誉教授
 専門分野:電気化学

新刊情報