宇宙は爆発でみちているーービッグバンからブラックホールまで、爆発で進化する宇宙

(著) 松岡勝

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作品詳細

[商品について]
―天文学は、爆発だ!―
宇宙創造の爆発であるビッグバン、爆発により光り輝く恒星、星の死のひとつの姿である超新星爆発など、この広い宇宙を見わたすと、いたるところに爆発がある。そんな爆発という視点から宇宙を眺め、そこで起こるさまざまな現象を旅してみれば、その不思議で謎に満ちた世界はきっと貴方を虜にするだろう。ーー半世紀にわたりX線天文学の最前線で観測と研究に生きてきた著者が贈る、変光星からブラックホールまで宇宙の謎とロマンが爆発する眠れないほど面白い最新天文学夜話。

[目次]
電子版発刊にあたって
はじめに
第一章 宇宙は爆発天体でみちている
(1)爆発天体のエネルギー源
(2)爆発はX線で見つけやすい
(3)広い視野をもつ観測装置で爆発天体を探る
(4)激動する宇宙を探る
第二章 星の大気で起こる爆発
(1)X線では荒れ狂う太陽表面
(2)磁場でつくられる太陽フレア
(3)連星系変光星で起こる爆発
➊りょうけん座の変光星の仲間から巨大なフレア
➋悪魔の星のパラドックス
(4)自転が速いと大きなフレア?
(5)若い星はとにかく元気!―核融合で輝く前にも爆発
➊原始星―星の赤ちゃん
➋おうし座T型星―成人前の星
(6)巨大太陽フレアは起きるか?
第三章 白色矮星で起こる爆発
(1)激変星と白色矮星
(2)超軟X線源(SSS)
(3)古典新星の爆発時に観測されたX線の閃光
第四章 天の川はX線でも輝いている
(1)X線の天の川の発見
(2)X線の天の川の正体は?
(3)星フレアは何かを語っている
(4)星コロナ起源説
(5)中性の鉄元素からの輝線放射の謎
第五章 中性子星連星系でくりかえされる爆発
(1)中性子星の登場物語
➊X線星の発見
➋中性子星はこうしてできる
➌電波で見える中性子星―電波パルサー
➍X線で見える中性子星―中性子星連星系
(2)若い中性子星が普通の星と連星になっていると
➊電波ならぬX線パルサー
➋BeトランジェントX線パルサー GX304―1
➌磁場の最高記録の競争
➍連星周期よりも長い周期の発見
➎さまざまなBe型星の連星系
➏宇宙最高性能の時計としてのX線パルサー
➐奇妙なトランジェントSFXT
(3)磁場の弱い中性子星と普通の星が連星になっていると
➊中性子星全表面で起こるヘリウム爆弾
➋〝スーパー〟X線バースト
➌中性子星と白色矮星で起こる熱核融合爆発は何が違うか
➍輝けるX線新星
➎現代天体物理学の挑戦―降着円盤の物理
➏ライオンの大吠えと猫のゴロゴロ
➐コンパス座 X―1の奇妙な話
(4)中性子星の特徴と進化
➊超高速回転をする中性子星
➋中性子星の強力な磁場の起源
➍黒い毒蜘蛛からリサイクルパルサーへ
(5)中性子星のこれからの問題と失敗談
第六章 X線新星からブラックホール天体の発見は続く
(1)ブラックホールの魅力
➊二種類あるX線新星
➋ブラックホールの発見
(2)史上最強のブラックホールX線新星?
➊X線と光のアウトバースト
➋ブラックホールX線新星の爆発メカニズム
➌宇宙の超高速ジェット
(3)いて(射手)座のX線新星XTE J1752―223 草食系ブラックホール登場
(4)マキシで追うブラックホールX線新星
➊へびつかい座のX線新星MAXI J1659―152
➋わし座のX線新星MAXI J1910―057
(5)ブラックホールは超高速ジェットを放つ
➊〝マイクロ〟クエーサー
➋マイクロクエーサーSS433の見事なジェット
(6)はくちょう座 X―3の謎
(7)ブラックホールの原典―はくちょう座 X―1の今
(8)ブラックホールと中性子星の違い
(9)X線のアウトバーストで星間空間の塵の分布を探る話
第七章 巨大な残骸を残す超新星の爆発
(1)超新星の爆発で宇宙の物質は進化する
(2)かに星雲―超新星の原典
(3)白色矮星が爆発する小型超新星―Ⅰa型超新星
(4)もっとも最近、肉眼で見えた超新星1987A
➊マゼラン星雲で超新星が発見される
➋SN1987Aの現在
(5)超新星のショック・ブレイクアウトとベテルギウス
(6)はくちょう(白鳥)座の極超新星の残骸
第八章 ガンマ線バースト
(1)ガンマ線バーストの発見と正体
➊ガンマ線バーストの発見
➋ガンマ線バーストは銀河系外から来ていた
➌ガンマ線バーストには残光があった
➍ガンマ線バーストの凄まじいエネルギー
➎ガンマ線バーストに残る謎
(2)ガンマ線バーストの種類
➊クラシカルガンマ線バースト
➋ショートガンマ線バースト
➌ソフトリッチガンマ線バーストと未同定天体
➍ソフトガンマ線リピーター
(3)ガンマ線バーストはどのように発生するのか?
(4)ガンマ線バーストが宇宙観測に与えた影響
(5)高速電波バーストの謎
第九章 巨大ブラックホールをもつ活動銀河からの爆発
(1)活動銀河と巨大ブラックホール
(2)ジェットを出す活動銀河核―マルカリアン421
(3)クエーサーからの巨大ジェットは光速を超えるか?
(4)巨大ブラックホールに星が落ちこむ瞬間をとらえる
(5)巨大ブラックホール同士が衝突するとき
(6)活動銀河核の放射が集まると?―宇宙X線背景放射の謎解き
(7)恒星質量のブラックホールから、銀河スケールの巨大ブラックホールへ
第十章 ビッグバンへ
おわりに
著者略歴

[著者略歴]
松岡勝(まつおかまさる)
1939年三重県生れ
名古屋大学・理学研究科で、国産の観測ロケットによる宇宙X線の観測を日本で初めて実行し、一九六六年に理学博士号取得。博士号取得後、東京大学宇宙航空研究所の助手、助教授、理化学研究所主任研究員、宇宙科学研究所の客員教授、埼玉大学客員教授を歴任。この間、X線新星、X線バーストの研究に従事し、はくちょう衛星チームの一員として「朝日賞」(一九八〇年)を受賞。その後、理化学研究所主任研究員時代は活動銀河の研究で初めて活動銀河のX線スペクトルに構造を発見、これをもとに宇宙X線背景放射の点源説を定量的に初めて提案した。
理化学研究所では三つのプロジェクトを新しく立ち上げた。(1)宇宙開発事業団の技術試験衛星に重粒子検出器と電子・陽子の宇宙放射線モニターを搭載して宇宙放射線の研究では共同研究者(河野毅)に協力した。この技術はその後、JAXAの宇宙放射線計測の標準装備となって継承されている。(2)米・日・仏の国際共同のガンマ線バースト観測衛星(ヘティHETE:二〇〇〇年打上げ)への参加。ヘティでは、日本側代表として、ガンマ線バーストの位置決定をし、光学対応天体の同定に貢献。(3)国際宇宙ステーションに載せた全天X線監視装置マキシ(MAXI)を提案し実現させた。マキシでは、NASDA/JAXAでMAXIのサイエンス・マネージャ(NASDA/JAXAの招聘研究員)を勤めた。マキシは二〇〇九年に打ち上げ、現在に至っている。
二〇一〇年にJAXAから理化学研究所に戻り、理化学研究所の特別顧問を勤めマキシの科学成果の推進に努めている。現在は理化学研究所名誉研究員・研究嘱託として、マキシのデータを使った研究を継続中。マキシのデータは世界の関係者に広く使われ共同研究も多い。二〇一三年には、マキシの主論文(Matsuoka, M. et al., PASJ, 61 (2009), 999)で日本天文学会から論文賞を受賞した。

主な著書
Cosmic X-Rays M.Oda and M.Matsuoka〔共著〕North-Holland Publ. Co.(1971)
宇宙の観測Ⅱ(共著)       恒星社厚生閣 (1982)
X線でみた宇宙          共立出版   (1986)
物理学の最先端常識(共著)    共立出版   (1987)
高エネルギー宇宙物理学(共著)  朝倉書店   (1990)
X線・ガンマ線のスペース天文台  恒星社厚生閣 (2008)
(「日本の天文学の百年」での分担執筆)

[担当からのコメント]
天文学は、夜空を見上げさえすれば誰でも楽しめる学問です。天体観測の中には、変光星観測のように主に肉眼で行うものもあります。そんな時に宇宙や星の知識があると、見上げる夜空はもっと楽しくなります。そして宇宙の謎を知れば、もっと夜空を眺めたくなります。ぜひ本書と共に、そんな喜びを味わっていただければ嬉しく思います。

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