恋歌のコラージュ――遺伝子組替の中の歌物語:村崎深樹詩集

(著) 村崎深樹

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作品詳細

[商品について]

―恋歌の遺伝子は、現在も私たちの世界に偏在している―

今年もまた/春は去って行きました/日は輝き/花は相似て咲き/鳥の歌う/新しい季節に組み換えて/でも/わが身だけは/やはり/ぽつんと/一つ/取り残されたままの寂しさで(本書「遥かな春に」より)

万葉集をはじめ日本人は遥か昔から「恋」を詠ってきた。その恋歌の遺伝子は、伊勢物語などの歌物語、古今和歌集や百人一首などの歌集を通じて連綿と受け継がれてきた。本書は、今も色褪せぬそうした恋歌の遺伝子に触発され、現代の言葉の中に受肉させた「恋歌工学」ともいえる独自の企みを詩に昇華させた作品集である。



[目次]

揺れる恋の思い

不思議な節(ふし)の間

五月の恋

この香ぐわしい花たちばなの香よ

夢のデートと知っていたならば

なんて夢というものは

恋の原子炉

でもやっぱり聞いてみたいわ

揺らぐ の恋の路

中学校の悔恨のバルコン

花の日

心変わりの恋心だなんて

汚染悲歌

ささの葉の別れのささやき

しのぶ恋文の乱れ

人伝でなく

みずみずしい人に

これほど艶やかな深紅に

恋する街角のカフェ・テラス

ノンポリの野守(のもり)でも

来(こ)ぬ人の夕凪渚(ゆうなぎなぎさ)

純度の高い色男

青い目に

かたぶくまでの月を

ガラスの記憶の中を

長くもがなの歎き

いくら割れても別れても

幻の滝の音

今日を限りの

遥かな春に

琵琶湖の畔(ほとり)の定点観測

いまひとたびの

露と答えて

夢の通い路

誓ってしまった私

乱れた黒髪のように

恋人の花の色も

何を思っていたのだろう

ファジーな恋風

あとがき

著者略歴



[担当からのコメント]

和歌の持つ重層性はその時代の「言葉」を使わない人々を拒むとしても、根底にある美意識の系譜を現代の私たちも受け継いでいるのであれば、それを私たちの言葉で味わい尽くすというのも一つの楽しみ方ではないかと思います。本書が多くの方にとって、豊かな言葉の遺産への入口となれば嬉しく思います。



[著者略歴]

村崎 深樹(むらさき ふかき)



1931年7月6日 千葉県鴨川市生まれ



東北大学 国文学科卒 同大学院前期課程修了



会員 千葉県詩人クラブ



詩集 私家集7冊・他

   『言葉の「鉱石船」と詩情の「レアメタル」』(朝日新聞出版)

   『遠くなっちゃった昭和の ちょっと古風な自選詩集』(仙台共同出版)



油絵歴

 入選 第28回河北美術展 第34回香川県美術展

    第2回サロン・デ・ボザール展(以後20数回)

 入賞 サロン・デ・ボザール展 奨励賞2回 特選1回

 個展 仙台5回 鴨川8回

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