批判的に読み解く「歎異抄」――その思想のもつ倫理的課題

(著) 寿台順誠

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[商品について]

―『歎異抄』はインフレ気味になってはいないか―

これまで『歎異抄』といえば親鸞、親鸞といえば『歎異抄』といえるほど、両者はイコールとして考えられてきた。しかし近年、親鸞の思想と『歎異抄』の内容は必ずしもイコールではないのではないか、という考え方が支配的になってきている。そうした視点から、本書は悪人正機説や「専修賢善」と「造悪無碍」などの問題を、テキストを繙きつつ構造的に解き明かし、『歎異抄』のもつその思想と現代的意義を浮き彫りにする。つまみ食いではなく真に『歎異抄』と仏教を理解したい人のための、目からウロコの講義録。



[目次]

まえがき

批判的に読み解く『歎異抄』(第一回講義)

(はじめに)『歎異抄』と親鸞の異同(何がどう異なるのか)

『歎異抄』の「悪人正機」を親鸞思想の中心思想として肯定する立場(同)と、そうでない立場(異)

一、「悪人正機」(第三条)の問題

(1)「悪人正機説」の提唱者(定式者)―親鸞?法然?唯円?覚如?

(2)「悪人」の意味

(3)「正機」と「正因」

(4) 悪人正因(正機)説の問題点

二、本願ぼこり(造悪無碍・第十三条)の問題

(1)宿業の問題

①運命としての戦争

②非仏教性

③差別性

④論理自体の説得力―

(2)「薬あればとて、毒をこのむべからず」(親鸞の残した課題?)

(3)唯円が「本願ぼこり」(「造悪無碍」)を擁護することに理由があるとすれば、それは何か?

(おわりに);宗教と倫理道徳

批判的に読み解く『歎異抄』(第二回講義)

(はじめに)

一、『歎異抄』の構成

1、全体の構成

2、「師訓篇」及び「異義篇」の構成と両者の関係

二、「異義篇」の批判的読解

1.なぜ「異義篇」を中心に読むのか?

2.「異義篇」の一般的な見方

3.「異義篇」に対する私(順誠)の見解

(1)専修賢善計

①十四条―一念滅罪

②十六条―自然回心

③十八条―施量分報

(2)誓名別信計

①十一条―誓名別信

②十二条―学解念仏

③十五条―即身成仏

④十七条―辺地堕獄

(おわりに)十三条(本願ぼこりと造悪無碍)再考

(補足説明1)「悪人正機と悪人正因」再考

(補足説明2)『歎異抄』全体の構成についての異説―佐藤正英説

(補足説明3)『歎異抄』の現代語訳について

(質疑応答)

(注)

(資料)

あとがき

著者略歴



[担当からのコメント]

数ある仏教書の中でも『歎異抄』は一般の人にも愛読者が多い名著といえるでしょう。しかしそこには少なからず親鸞や歎異抄に対する臆見やイメージが付きまとっており、そうしたものが本当の意味での理解を妨げているのではないかと思うことがあります。本書は、そんな歎異抄を仏教者の視点から鮮やかな論理で一般の方に分かりやすく解説した作品です。仏教に学びを求める方はもちろん、歎異抄を読んだことがないという方にも是非お読みいただきたい一冊です。



[著者略歴]

寿台 順誠(じゅだい・じゅんせい)



 1957年、真宗大谷派正雲寺(名古屋市中川区)に生まれる。1981年3月、早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒業後、僧侶として正雲寺に勤務するかたわら1982年4月、同朋大学文学部仏教学科に編入学して仏教(浄土真宗)を学ぶ。1984年3月、同大学卒業後、関西のいくつかの寺院に勤めながら靖国問題·部落差別問題等に関する仏教者としての社会的諸活動を経て、1990〜1993年、参議院議員翫正敏(当時)の公設第一秘書を務め、平和と人権に関わる諸問題(PKO・戦後補償等)に関わる。

 秘書辞任後、1994年4月、横浜国立大学大学院国際経済法学研究科修士課程において国際関係法を学び(1997年3月、同大学院修了)、1998年4月からは一橋大学大学院法学研究科博士後期課程において憲法を学ぶ(2007年3月、同大学院退学)。また、この間、1999年には浄土真宗本願寺派光西寺に入寺(真宗大谷派から浄土真宗本願寺派に転派)、2001年に同寺住職に就任、「学びの場」としての寺作りを模索してきた。2021年12月、後継に住職を譲り、現在は同寺前住職となっており、今後は一個人として思想信仰の問題を究めたいと思っている。

 さらに最近では、2011年4月より早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程においてバイオエシックス(生命倫理)を学び(2014年3月、同大学院修了)、2016年4月からは早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程において日本文化論を学んだ(2022年3月、同大学院を退学したが、現在、博士論文を執筆している。論文の仮題は「近現代日本の生老病死─文学作品に見る仏教と生命倫理─」)。

(光西寺ホームページ:http://www.kousaiji.tokyo/)

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