HIVと向き合う診療所ーー薬害、アフリカ、そして感染者と地域とともに生きる

(著) 西村有史

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作品詳細

[商品について]
―エイズでの過ちを、新型コロナでも繰り返していないか―
サンフランシスコの男性同性愛者で確認された奇妙な病気は、やがてエイズという名と共に瞬く間に世界を駆け巡った。その悲劇は血友病患者の輸血による感染へと拡大し、この薬害と感染者への差別は日本でも大きな問題となった。本書は、エイズへの正しい認識がなく社会的脅威と捉える風潮の中で、自らHIV患者を引き受ける診療所を開設し、エイズ問題や薬害問題、そして世間の偏見に立ち向かった一人の医師の記録である。医師とは、医療とは何かを現代社会に改めて問いかける現代人必読の書。

[目次]
はしがき――草伏村生さんの思い出
序 エイズとはなにか
第1章 道草ばかり、それでも医者に
三代続いた医者の家
学生運動の残り火のなかで
患者さんに鍛えられた修業時代
第2章 対岸の火事としてのエイズ
エイズのはじまり
ドン・フランシスとCDC
血友病患者の悲劇
クロロキン薬害訴訟
運命の一九八三年
「昭和の御不例」と日本の血液浪費
製薬会社による「エイズ隠し」
血友病の「権威者」=安部英の犯罪と裏切り
第3章 私も薬害の加害者だったのか!?
自堕落な医師としての私
認可された「加熱製剤」、しかし……
「良いエイズ、悪いエイズ」論の虚妄性
隠された薬害=ホパテ中毒との遭遇
ホパテ中毒に沈黙する学会
毒物=ホパテが田辺製薬を救った?
第4章 アフリカで見たエイズの猛威
シェア(国際医療協力市民の会)との出会い
〝忌むべき日本〟からの脱出
医務官としてタンザニアへ
エイズが広がる土壌
とにかく待つこと
はじめてのマラリア医療と薬害との再遭遇
タンザニアのエイズ・キャンペーンの破綻
「夜明け前」の国=南アフリカへ
世界一奇妙な国!?
アフリカへの思い、夢
第5章 医師としてのカム・アウト
欺瞞に満ちたスモン高裁判決
帰国、感染者との出会い
エイズ予防ポスターの是非
孤立させられる感染者
血友病医学の蹉跌――血友病Aの場合
血友病医学の犯罪――血友病Bの場合
すさまじい診療拒否の実態
キルトの旅
「ウィットマン・ウォーカー・クリニック」の衝撃
開業の決意
第6章 エイズ差別論との闘い
感染者差別に加担するマスコミ
差別を〝肯定する〟医師たちの無関心
活字ジャーナリズムに失望
エイズはなぜ脅威となっているのか
第7章 地域のなかで患者とともに生きる
開業――感染者を引き受ける診療所
マスコミの取材と新たな決意
死を前にした焦燥と軋轢
薬害とはなにか、なぜ繰り返されるのか
薬害根絶は可能か
和解は勝利ではない
広がる交流、立ち上がる医師たち
地域で生きるために――村地さん一家の闘いに学ぶ
♡♡♡――エイズ問題をもっと知りたい人へ
あとがき
電子書籍出版によせて
著者略歴

[担当からのコメント]
不死の病と懼れられたエイズも研究の進展により治療に光明が見えてきていますが、差別や偏見によって傷つけられた心はそうはいきません。繰り返される薬害、繰り返される差別、それらの温床となる社会構造を私たちはどう考えていくのか。新型コロナという新たな脅威を前に、私たちはその答えを求められています。そのための一助として、本書を多くの方にご活用いただければ嬉しく思います。

[著者略歴]
西村有史(にしむら ゆうじ)

1950年、福岡県生まれ。1980年、九州大学医学部卒業。直方中央病院、九州大学医学部附属病院勤務をへて、1990年、日本大使館づき医務官として、タンザニアに1年間赴任。1993年、福岡県豊前市に、内科・循環器科のクリニックを開設。1996年、「HIVとつきあう開業医の会」を設立し、代表に就任する。

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