檸檬と電車: 梶井基次郎と市電の時代

(著) 新妻郁男

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作品詳細

平成十九年に、突然文芸社から批評付きの書簡が来て、市販本としての刊行を勧められた。話の発端は、私家版の一冊が、東京に流れ着いて、ある図書館に展示されているのを、たまたま訪れた文芸社の社員の方の目に留まったことによる。
 ところがその頃、私は志賀直哉のことを書いていて、最後の「城の崎にて」論に取り掛かっていたので、気持の余裕がなく、その気になれなかった。そして今回の文庫本形式による出版である。気持は直ぐ決まった。何はともあれ、この本を発見してくれた文芸社にどこかで謝意を表したかった。それに私家版として遠慮がちに上梓した一冊が、文庫本という普及版で、復刻公刊されることに、多少の感慨もあったからである。
(本文より)

【著者プロフィール】
新妻 郁男(にいつま・いくお)
1931年福島県に生まれる。東北大学経済学部卒業。
定年退職後、主に次の二つのことについて書き始める。
①安政5年に幕命によって箱館に渡海し、蝦夷地開発30ヶ年計画を策定し、実際の指導にも当たった相馬藩士のこと。
②「檸檬」の作家梶井基次郎とその時代。
これらは『箱館』(1994年、私家版)、『檸檬(れもん)と電車』(1999年、私家版)として上梓する。
その他の著書に『相馬を父祖の地とする作家たち』(1995年)、『花の山旅』(2011年)、『志賀直哉』(2012年)、『助宗明神私記』(2015年)などがある。殆どが私家版である。

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