ちょっとしみじみ悩みつきない医者人生
(著) 井口昭久
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―哀愁だだよう医師の背中は、悲劇も喜劇も良く似合う―
内科の医局員時代にスキー目当てで教授の講演のカバン持ちを買って出たら、肝心の教授は講演前にギックリ腰になってしまった。痛む腰をおして何とか講演には出かけたものの、教授は宿で安静にせざるを得ない。そんな教授を横目に、当時スキーに入れ上げていた著者はひとりゲレンデへと向かうがーーまるで落語のようなオチが楽しい「カバン持ち」をはじめ、老年学でお馴染みの井口センセイが、医師として過ごしてきた日々をユーモアとペーソス豊かに綴った抱腹絶倒の医学エッセイ。
[目次]
Ⅰ 大学医学部
東海豪雨
カバン持ち
学生時代
変わる団地、変わらない医療
学生と出席
居眠り
教育について
泥棒始末記
手帳と記憶の喪失感
自主ローテート研修
世の中面白いことがなければ何も面白いことはない
あいさつ
Ⅱ 機内食
機内食の思い出
ニューヨークに母を偲ぶ
私にとっての信州の四季
偽中国人同士
秋の写真屋さん
ゴルフ
K先生
S先生と私
Ⅲ 長男の憂鬱
終わらない老人介護
父の最期、無力な自分
長男の憂鬱、人ならでは
鬱の季節
心の病気
先行き認知症
におい消え、感じた老い
みんなすこやかに老いている
来るべき不安におびえ
揺るぎないコミュニケーション?
Ⅳ はてしない老人問題
人はやさしく制度は冷たい
介護の夫残し先立つ妻
これからの「老人問題」
「老い」は測れない
奥さんの復讐
高齢者の鬱病が増えている
死が無縁という錯覚
Ⅴ 彼女に贈るメッセージ
彼女に贈るメッセージ
生きることは老化と同義
よりよく老化するにはコツがいる
科学の及ばぬ加齢過程
寿命はどこまで延ばせるか
長寿の極意は食事制限?
心がけ次第の生活習慣病
肺炎防止に歯磨き励行
しわは人生そのもの
白髪は老化にあらず
「物忘れ」自覚は大丈夫?
発作解決策、自分で探る
年取ると強くなる女性
老いへの関心、各分野に
第三期は宿題の仕上げ
Ⅵ 共感する能力を磨いて
共感する能力を磨いて
馬子にも衣装
医者について――日本航空の社医になって
人の悩みについて
オジサンについて
精算について
弓道から学んでほしいこと
大衆弓道と純弓道――弓道部に寄せる
野球部の部長就任にあたって
ホームベースの見えないサードランナー
あとがき――病院長就任にあたって
著者略歴
[担当からのコメント]
小説や詩などと違って、エッセイは本来あまり人の感情を揺り動かすことはない文学ですが、本書に収められた作品は概ね笑いの方向で人の心を揺り動かします。本書の成分は笑い5、真面目4、悲哀1のようになっていますが、人生という隠し味が効果的に使われているため、思わず吹き出したり、しみじみしたりしてしまいます。井口センセイの作品の愛読者もそうでない方も、ぜひこの極上のエッセイをご賞味あれ。
[著者略歴]
井口昭久(いぐち・あきひさ)
1970年、名古屋大学医学部卒業後、名古屋大学医学部第三内科入局。78年、ニューヨーク医科大学留学。93年、名古屋大学医学部老年科教授。現在、名古屋大学医学部附属病院長を経て、愛知淑徳大学健康医療科学部教授・名古屋大学名誉教授・第32回日本老年学会会長
おもな著書に『鈍行列車に乗って』『やがて可笑しき老年期』『旅の途中で』『誰も老人を経験していない』『「老い」という贈り物』(以上、風媒社)、『これからの老年学――サイエンスから介護まで』(編著、名古屋大学出版会)などがある。
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