マイスター・エックハルトの言葉・思想・宇宙:その思索へ向かって思索する試み

(著) 大津留直

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作品詳細

[商品について]

―宇宙的な「神への探求」という壮大な知の冒険―

中世ドイツのキリスト教神学者であり、神秘主義者であったマイスター・エックハルト。本書は、フライブルク大学のキリスト教宗教哲学の教授であったベルンハルト・ヴェルテが、エックハルト研究の集大成として著した『Bernhard Welte: Meister Eckhart, Gedanken zu seinen Gedanken』を全訳した作品である。ハイデッガーとの関連において語られる「離脱」や、禅仏教との近縁性など、「現象学」的ともいえるエックハルトの思想を解き明かしながら、最終的に神から出発し、神において起こる世界の運行についてのエックハルトの思想を明らかにしていく。神について思弁するうえで、また現代思想の諸問題を考えるうえでも、示唆に富む内容となっている。


[目次]

新版へのはしがき

前書き

序論

第1章 考察されるべきであろう事柄と、 その事柄に適した思索方法について

第1節 形而上学の層

第2節 宗教的遂行の層

第3節 二つの層の関連

第4節 神学的な層、および全体の関連

第5節 影響史の証言

第6節 考慮されるべきであろう事柄

第7節 思索へ向かって思索する試み

第8節 最近のエックハルト文献への注

第一部 神性の暗き光への道

第2章 「離脱」

第1節 「離脱」の構造

第2節 我 性

第3節 放 任

第4節 フッサールとハイデッガー

第5節 思弁的な背景

第3章 「離脱」と、真理としての神

第1節 真理としての神

第2節 放任と真理

第3節 真理の概念

第4節 永遠なる真理

第5節 真理についての、新プラトン主義とトマス主義との伝統の見解

第6節 「離脱」と真理

第7節 思弁と直接性

第4章 善性としての神

第1節 エックハルトのテクストにおける箇所

第2節 善性という、ここに出てきた概念の解明

第3節 絶対的な善性

第4節 善性の形而上学的概念と、出会いの直接性

第5節 善性の形而上学的概念

第5章 真理と善性との基礎としての存在と一者、 そして、三位一体

第6章 形而上学の超克への道

第1節 思想としての真理と善性との超克

第2節 『パリ問答集』における知の問題

第7章 突破――「離脱」の無としての神

第1節 エックハルトの決定的なテクスト

第2節 主観性も消え去る

第3節 形而上学のこの超克を支持する伝統の証言 ――キリスト教的新プラトン主義とトマス・アクィナス

第4節 禅仏教の領域との類似

第8章 同一性の問題

第1節 同一性に関するエックハルトのテクスト

第2節 出来事の同一性と存続の同一性との、伝統における区別

第3節 出来事の同一性と主客分離の止揚

第9章 同一性の変容

第1節 出来事の同一性の一般的な基礎

第2節 鏡の形象と鏡の両面

第3節 父性と子性というモデル

第4節 「離脱」した人間の神に対する関係における子性と父性

第5節 感謝の問題

第6節 「義」と義(ただ)しい者

第二部 神性という暗き光への道の前提としての、魂の根底

第10章 魂の根底とその根底における非被造物

第1節 遂行の前提

第2節 魂の根底についてのテクスト

第3節 人間精神の構造の解明

第4節 このアウグスティヌスの教説とのトマス・アクィナスの類似

第5節 魂における非被造物的なものについての教説と、 「離脱」についての教説との関連

第6節 仏教との類似

第三部 神性という暗き光における世界のヴィジョン

第11章 神における世界の物

第1節 人間と世界

第2節 はかなさにおける被造物としての世界

第3節 神性における、被造物としての世界

第4節 世界が神的であるという可能な経験

第5節 観想的生活と活動的生活との関連

第6節 仏教との類似

第12章 世界の始まりと終わりの不可思議さ

第1節 世界の進行と、神から神への世界形態

第2節 始まりの静寂

第13章 始まりの不可思議さから出て来る世界の根源と、 統一としての世界の根源的形態

第1節 弁証法的な授与としての根源

第2節 充溢としての統一

第3節 統一の場所としての人間

第14章 世界の不統一、禍と罪

第1節 禍と悪との根拠としての統一中の不統一

第2節 禍と痛み

第3節 悪と罪

第15章 神の暗き光への世界の突進

第1節 世界の存在様態としての目的的動性

第2節 宇宙的動性とその段階についての解釈

第3節 最後の終結

付説

第16章 エックハルトに対する裁判についての考え

訳者解説



文献目録

「離脱」について‐哲学することの根本様態としての離脱‐

1、なぜ今「離脱」なのか

2、無償性と有償性

3、「離脱」における二段階と「一即二」・「一即多」

4、「内在的超越」

【註】

文献解説

著者紹介

訳者紹介


[出版社からのコメント]

現代では哲学と神学は切り離されていますが、トマス・アクィナスやオッカムのウィリアム、フランシス・ベーコンのように、神への探究の中から重要な思索を行った先哲の業績は、時代を経ても尚、私たちに多くの実りをもたらしてくれます。その実りの一つである本書を通じて、エックハルトの思想に多くの方が触れる機会を持っていただければ嬉しく思います。


【著者紹介】

ベルンハルト・ヴェルテ(Bernhard Welte)


1906年生まれ.カトリックの僧で,1952年から以降1975年に退官するまで,フライブルク大学(キリスト教)宗教哲学の正教授をつとめた.1983年没.アリストテレス,トマス・アクィナスについての碩学として知られ,マイスター・エックハルトの思想にも生涯親しみ,本書はその研究の集大成となるもの.なお本書は,著者ヴェルテが1976年1月14日に最晩年のハイデッガー(同年5月26日没)と行なった対話を機縁に書かれたものである.


【訳者紹介】

大津留 直(おおつる ただし)


元大阪大学,関西学院大学講師.チュービンゲン大学哲学博士.著書に,〝Gerechtigkeit und dike. Der Denkweg als Selbstkritik in Heideggers Nietzsche-Auslegung〟(Verlag Könighausen und Neumann, Würzburg).訳書に,E. マイスター『死は望郷を踏みにじる』(理想社),D. イェーニッヒ『芸術の空間』(共訳,青弓社)など.

現在 「あけび短歌会」選者

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