雪中行軍遭難二つの疑問:歩兵第五聯隊第二大隊雪中行軍遭難の全容と原因の追究

(著) 加藤幹春

Amazon

作品詳細

[商品について]

―史実は、物語の中にあるのではない―

行軍に参加した210名のうち199名が死亡するという歴史に残る悲劇として小説や映画にもなった八甲田雪中行軍遭難事件。何故これほど大規模な遭難が発生したのか、これまでその原因は山口大隊長の編成外参加とそれによる指揮系統の乱れにあると言われてきた。しかし、果たしてそれは真実なのだろうか。編成外参加と指揮系統の乱れに疑問を抱き、自衛官として青森駐屯地に勤務する傍ら調査を進めた著者は、ついにこれまでの説を覆す資料へと辿り着く――。膨大な資料から八甲田雪中行軍遭難事件の真実を読み解く渾身の調査記録。


[目次]

はじめに

雪中行軍の背景

歩兵第五連隊における雪中訓練の状況

出版物の検閲と遭難報道

編成外と列外

但シ小隊長ハ列外者ヲ以テ交代スルコトアルベシ「遭難始末」

指揮の乱れ(伊藤中尉の口演)「郷土史 うとう十三号」

小説「八甲田山死の彷徨」「私の創作ノート」「陸奥の吹雪」「遭難始末」

雪中遭難雑記の出現  「雪中遭難雑記」(※生存者長谷川特務曹長の手記)

田代行軍前の大隊混成中隊訓練 「雪中行軍記録写真特集行動準備編」

雪中行軍の目的「遭難始末」

予行行軍「遭難始末」

行軍に対する大隊長の判断「遭難始末」

行軍ニ關スル命令「遭難始末」

雪中行軍について第二大隊長及び軍医の与えた注意 「遭難始末」

演習中隊長神成大尉の行軍計画「遭難始末」

想定(そうてい ある条件や状況を仮に決める事) 「遭難始末」

雪中行軍時での衛生上の調査予定項目「遭難始末」

大隊混成中隊が行う田代行軍に大隊命令の必要はない

大本営師団等編制(陸軍省が定めた部隊の定員・定数)

連隊本部や大隊本部は部隊の組織

大隊命令と神成大尉計画の編成の相違「遭難始末」

行軍隊の指揮は指揮官でなくても指揮出来る

伊藤中尉の述懐を考える

予が体験(生存者 長谷川特務曹長の手記)「予が体験」

遭難の責任と原因の究明

歩兵第五連隊長の第二大隊雪中行軍遭難に関する意見(明治三十五年三月三日)

歩兵第四旅団長の大隊長の採りたる行軍計画及び準備並びに 遭難の報に接した前後の連隊長処置に関する意見(明治三十五年三月四日)

歩兵第八師団長の第二大隊遭難事件に関する意見(明治三十五年三月六日)

取締委員会の調査報告

取締委員会による師団長以下の処分に関する意見「歩兵第五聯隊遭難ニ関スル取締委員会復命書」

歩兵第五連隊長の進退伺い「八甲田山雪中行軍遭難資料館」「十和田市郷土館」展示品より

連隊長の処分

都道府県別雪中行軍遭難死亡者数「遭難始末」

岩手・宮城県は雪国でないとの理由は妥当性に欠く

遭難当時、冬季訓練の教範類はなかった

予行行軍を田代新湯まで行ったとしたら

小峠昼食後、帰営出来なかったのか「歩兵第五聯隊第二大隊雪中行軍遭難」村松文門

凍傷予防法は日露戦争に活かされた「八甲田山遭難の実例から知る凍傷予防法第一編」

青森の気象予報「青森の気象百年 青森地方気象台」

救 援 隊「遭難始末」

捜索救護計画と捜索の実施「遭難始末」

特別業務

経 理 事 務「遭難始末」

物品の調達及び給養

運 輸 業 務

死体取扱業務

家族係の業務

委員擔(担)任事務

連隊区司令部

県出張員

諸規定及び注意

遭難者家族心得

状況の変遷

遭難者家族の感情

義捐金(義援金)取扱い業務

叡 盧(えいりょ 天皇の考え)「遭難始末」

遭難者の待遇と社会の同情

靖国神社への合祀「遭難始末」より

陸 軍 墓 地「さまよえる英霊たち」「お墓の誕生」「国民軍の神話」

幸畑陸軍墓地(墓苑)

山口少佐の死

銅 像「青森市史 別冊 雪中行軍遭難六〇周年誌」

遭難後に植林された杉の木

田茂木野捜索隊本部来訪者への対応

衛生部員の配置と衛生上の実験「歩兵第五連隊雪中行軍遭難に関する衛生調査報告」

衛生上の実験「歩兵第五連隊雪中行軍遭難に関する衛生調査報告」

遭難に関する衛生上の観察「歩兵第五聯隊雪中遭難に関する衛生調査報告」

生存した将校及び特務曹長の凍傷が比較的軽かった理由

雪 中 行 軍「歩兵第五聯隊第二大隊雪中行軍遭難顛末書」

明治三十五年凍傷患者治療報告「明治三十五年凍傷患者治療報告 青森衛戍病院」

転帰(てんき 病状の結果)

アイヌ捜索隊「歩兵第五聯隊雪中遭難に関する衛生調査報告書」

歩兵第三十一連隊の行軍編成「われ、八甲田山より生還す」

八甲田山麓雪中行軍秘話

弘前隊は青森隊生存者と遭遇したのか

青森隊は失敗、弘前隊は成功?

おわりに

付録


[担当からのコメント]

過去を知ることで現在と未来がよく見えるようになるのだとすれば、私たちは歴史の真実を視る目を養う必要があります。八甲田山麓雪中行軍の事件から何を読み取り何を学ぶのか、ぜひ本書を手に取ってお考えいただければ嬉しく思います。


[著者プロフィール]

加藤 幹春(かとう・みきはる)

新刊情報