たおやかに『枕草子』――平安のトリックスター・清少納言と後宮文化

(著) 藤本宗利

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作品詳細

[商品について]
―平安の世に生まれた希代の才女は、一流の道化師でもあった―
紫式部に「したり顔にいみじうはべりける人」と謗られたように、現代における清少納言のイメージには傲岸不遜、利口ぶって他人を見下す嫌な女というイメージが付きまとう。しかし『枕草子』から浮かび上がってくるその作者像は、細やかな目配りを忘れず同僚たちとの間の「和」を尊ぶ、協同的な力に富んだ女性に他ならない――これまでのイメージとは異なる清少納言や彼女が生きた時代と文化の実像を、『枕草子』を中心に『大鏡』や『栄花物語』等の文献も渉猟しながら明らかにした、新たな視点からの古典文学読本。

[目次]
Ⅰ「清涼殿の丑寅の隅の」段をめぐって
一 協同の場の文学として
1 桜花の円居
2 染殿后になぞらえて
3 独り勝ちを回避する技術
4 笑いという緩衝材
5 道化を演ずる処世術
二 後宮文化を統括する資質
1 後宮の経営者としての手腕
2 「PISA型」思考力重視の後宮
3 指標としての村上朝後宮
4 中宮主導型の風雅
5 一条帝の笑いのセンス
Ⅱ「五月の御精進のほど」の段をめぐって
一 五月雨の晴れ間に
1 山里への逍遥
2 卯の花の風流車
3 詠歌を拒む女房たち
4 連歌という挑発
5 歌詠みの家の重圧
二 「笑い」の新しい風
1 掛け合いとしての「笑い」
2 「笑い」の失敗譚
3 道化の資質
4 優美なる道化者
5「笑ひ」を演ずる一門
6 舞台演出としての「香炉峰の雪」
7 劇場としての後宮
Ⅲ 「女性美」を拓く後宮
一 新しい魅力としての漢才
1 漢才の血脈
2 思いがけない玉の輿
3 美男と才媛の結婚
3 特異な結婚観
4 宮仕え女性への嫌悪感
5 「家」の風儀をデザインする
二 漢才による差別化
1 モデルハウスとしての定子後宮
2 村上朝の先蹤
3 実践の場としての一条朝後宮
4 両面価値としての漢才
三 「女らしさ」からの逸脱の試み
1 見られることを忌む
2 型破りな風儀
3 「見せる」ための演出
4 陽気な服喪の演出
5 笑いのパフォーマンス
Ⅳ 没落の中で
一 劇場としての職の御曹司
1 中関白家の没落
2 帝寵再び
3 御曹司の日々の誉れ
4 零落の風儀
二 負け戦の華やぎ
1 卯の花車のデモンストレーション
2 帝寵に支えられて
3 絶対的権力者の焦燥
4 誇り高き滅び
三 風雅の終焉
1 「輝く藤壺」の内情
2 豪奢なる後宮の「埋もれ」
3 「清少納言」の影への反感
4 落魄説話をまとう人
5 山の端の月
著者略歴

[担当からのコメント]
本書は、紫式部と共に平安時代を代表する文学者である清少納言の、如才なく華やかな印象の裏にある素顔を知ることができる作品です。不器用でどこかオタクっぽい紫式部に比べるとイメージの悪い彼女ですが、その実像を知ればむしろ清少納言の方に共感できるという方も多いかも知れません。現代に通じる平安の才女の生きた世界を、ぜひじっくりとお楽しみください。

[著者略歴]
藤本 宗利(ふじもと・むねとし)

昭和33年 3月11日 群馬県に生まれる
昭和55年 3月 群馬大学教育学部卒業
昭和59年 3月 東京大学大学院修士課程修了
学位 博士(文学)
現職 群馬大学共同教育学部教授
著書 『感性のきらめき 清少納言』(新典社、平成12年)
   『枕草子研究』(風間書房,平成14年)
共著 『ことばが拓く古代文学史』(笠間書院、平成11年)
   『叢書 想像する平安文学 第4巻 交渉することば』(勉誠出版、平成11年)
   『平安文学史論考』(東京大学出版会、平成20年)

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