文学と心の森で 最終講義に代えて:木股知史精選評論集

(著) 木股知史

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作品詳細

[商品について]
―文学、言葉、迸るイメージ―
国木田独歩の『画の悲み』と現代の作品を並べながら、共同体から切り離されて社会制度に組み込まれていく競争心と、そこから距離を置こうとする「さとり世代」の現象が浮き彫りにする近代個人主義が内包する問題に鋭く切り込んだ『「負けず嫌い」の構造変化について』、心と言葉のかかわりについて、時枝誠記や吉本隆明、ヴィゴツキーなどの理論を概観しながら、言葉が生み出すイメージは失われた心的世界へ遡行するための手がかりであり、ごく普通の日常の言葉が芸術の言葉となりうる根拠を示すものであることを考察した『心・言葉・イメージ』など、長く近代日本文学の研究に携わってきた著者による、刺激的で決して消えることのない文学が持つ力への思いを込めて綴った、珠玉の精選評論集。

[目次]
はしがき
言葉が心に届くということ――『銀河鉄道の夜』を素材に
物語のなかの子ども
トラウマからの回復  バーネット『秘密の花園』
イノセンスについて  志賀直哉『小僧の神様』
見えない真実  サン=テグジュペリ『星の王子さま』
人生の道  芥川龍之介『トロッコ』
幼なじみの喜び  中勘助『銀の匙』
ディスプレイの向こう側  綿矢りさ『インストール』
ひとりのキッチン  吉本ばななと〈食〉
「負けず嫌い」の構造変化について
小林宗作校長とトットちゃん
心・言葉・イメージ
あとがき

[出版社からのコメント]
文学は私たちが日常で使う言葉を使った芸術であり、それ故に私たちは文学がさまざまな手段で表現しようとし、或いは表現しようとしなかった世界を日常に溶け合わせることができるように思います。本書の中にある文学を機軸とした世界が読み手の読書体験と触れ合って、あらたな文学の世界を多くの方に感じていただければ嬉しく思います。

[著者プロフィール]
木股知史(きまた・さとし)
近代日本文学研究者。博士(文学)。甲南大学名誉教授。『一握の砂/黄昏に/収穫 和歌文学体系77』(共著、明治書院、二〇〇四年四月)の歌集『一握の砂』の注釈、解説によって、岩手日報文学賞受賞。
著書、『画文共鳴 『みだれ髪』から『月に吠える』へ』(岩波書店、二〇〇八年一月)、『石川啄木・一九〇九年 新訂増補版』(沖積舎、二〇一一年七月)など。

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