LGBT・トランスジェンダーと3・11―—生きる人々の風景

(著) 谷合規子

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作品詳細

[商品について]
―性同一性障害のこと、どれくらい知っていますか―
現在のように周知される以前から市議会議員として性同一性障害の問題に取り組み、国会議員と連携して「性同一性障害の性別の取り扱いの特例に関する法」の成立に尽力した著者は、今度は肝心の当事者たちと、その暮らしに目を向けるようになる。知人を通じて交流会に参加し、性同一性障害に悩む多くの人々の人生に触れるようになって5年、日本は東日本大震災という未曾有の災害に襲われたーー性同一性障害を生きる人々と震災の日々を語りながら、多様な貌をみせる問題の本質と性同一性障害をとりまく日本や世界の状況を多角的な視点から取り上げたノンフィクション。

[目次]
はじめに
プロローグ 二〇一一年三月三日
*死に水とるまで
第一部 巨大地震、巨大津波、原発事故
二〇一一年三月一一日
*大震災、元妻の手をひいて
*「インターセックスではありません」
*いわきで被災する
*号外!「東日本巨大地震」
*津波と放射能に脅える被災地
*妻も許してくれた女装
三月一二日
*飲料水のポンプを押し続ける
*揺れ続ける日本列島
*男で通してきた上嶋清
*オレはどんどん女になっていく!!
*警察に被害届けも出せない
*自殺用のカミソリは捨てて!
*パートナーには真実を
*夫の女性ホルモン投与を許した妻
*妻の支えで女になれたジャン・モリス
三月一三日
*あれは、絶対生きている!
*遺体確認で問われる性別
*章子の結婚と妻の出産
*茨城で心配する恋人
三月一四日
*いわきの彼を救いに
*上嶋清と恋人秋葉めぐみ
*恋人にカミングアウト
*計画停電始まる
*初めての自己決定
*めぐみ、上嶋のアパートに
三月一五日
*ついに爆発した二号機
*最も危険な日、いわきを脱出する
*異性愛・同性愛
三月一六日
*避難所で四苦八苦するGID
*交流会は異性装の教習所?
三月一七日
*ヘリコプターから散水
*恋人と二人で救援物資運ぶ
*バケツの水があふれた!
*世界の先駆者ヨルゲンセンとモリス
三月一八日
*連れだって離婚の手続きを
*棺には女性の姿で納まりたい
*女になった〝夫〟と仲良く
三月十九日
*健診データをタイに送る
三月二〇日~二二日
*章子と菜穂子の九州旅行
三月二三日
*恋人じゃないよ、ただの友達だよ
三月二四日
*タイでのオペに、日本からの紹介状
*七五歳で性同一性障害の診断を受ける
*性別適合手術、タイ事情
三月xx日
*避難先で、ホルモン投与断られる
三月二八日
*タイのオペを断られる
三月二九日
*貧乏経験が役に立つ
三月三〇日
*燕尾服の下のふくらんだ胸
三月三一日
*章子、男性としてアパートを契約
*GIDは近くの人が一番怖い!
四月二日
*花嫁の父親役を果たした章子
*兄と、女になる〝弟〟との会話
*女になる〝夫〟と、妻との会話
四月五日
*恋愛感情への変化
四月七日
*大歓迎のドクター・ガモン・バンシートム
*麻酔科医の反対にあう
*上嶋清、いわきに戻る
四月九日
*経済観念はゼロの章子
四月一一日
*オペOK、おめでとう
*東北初の交流会
四月一二日
*原発の仕事だけはお断り
四月xx日
*「セックスはどうやるの?」と面接官
四月二〇日
*章子、一人暮らし始まる
六月一日
*監獄に入れられたGID
六月四日、五日
*第一三回GID学会
七月六日
*タイに手術を受けに行く
七月九日
*目が覚めなくても後悔はなし
七月一〇日
*きれいな〝お花〟をありがとう
七月一四日
*ツインの部屋は寂しすぎる
七月一五日
*術後のリハならぬ〝入門訓練〟
七月xx日
*被災後、初の交流会
*差別される自衛隊員
七月二一日
*二重瞼の美容手術
七月二七日
*退院まであと一週間
八月三日
*最終検査、問題なし
八月四日
*成田に到着
八月一三日
*被災後、初の交流会
八月二七日
*セックスとジェンダー 医学会と女性学会の違い
*「一般社団法人gid・jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会」
九月一三日
*アパートの家賃が上るいわき
九月二〇日
*一人で生きて行く
九月二九日
*章子八〇歳の誕生日
九月三〇日
*国の自殺総合対策に性同一性障害も
一〇月一一日
*やっぱり絆は大切
一一月xx日
*PTSD(心的外傷後ストレス障害)
一一月一三日
*ペットを置きざりにした避難民
一一月一八日
*「手術に健康保険の適用を」 厚労大臣に
*いくらかかるのか? 性別適合手術
一二月一日
*ホルモン療法にも保険適用を
一二月一五日
*「宵越しの金は持たない」
一二月一六日
*総理大臣の事故収束宣言
一二月二二日
*「俺は負げね! 這いあがってみせる」
第二部 性同一性障害をとりまく状況
1 埼玉医科大学で初の性別適合手術
*「ペニスが欲しい」と訴える患者
*患者の苦しみを救うのが医者の役目
*原科教授、見知らぬ当事者に教えを乞う
*心臓移植手術第一号の教訓
*ブルーボーイ事件
*性転換手術が三〇年遅れた原因
2 特例法成立の前後
*世界女性会議とセクシュアルマイノリティ
*地方議会と性同一性障害
*「特例法」は歴史の新たな一ページ
*一条の光。まず法律を産むこと
*政治家浜四津敏子の実現力
*紀元前の釈迦が性の移行を説く
*移行しても普遍的なもの
*とりかえばや物語
3 性の移行と家族の問題
*子なし条例 見直しはされたが
*婚姻持続の権利・日本とドイツ
*子どもの性別違和
*子の願いと教師の思い
*文科省へ要望書を提出
*子どもの周辺にGID情報を
*性と生殖に関する健康と権利
*性殖医療とGID
*人工授精(AID)の子と親の課題
4 性別変更・欧州各国の事情
*ジョグジャカルタ原則
あとがき
〔主な参考文献一覧〕
2023年。変化するLGBTの状況 電子版発行にあたって
LGBT法成立とその意味は?
特例法の生殖機能除去要件は憲法違反? 最高裁大法廷で審理中
「オペなしで! 戸籍上も『俺』になりたい裁判」
原発事故処理水放出の余波とLGBT
「特例法」の原動力となった山本蘭の逝去
79歳で性を変えた矢矧章子とパートナー
愛娘の自殺
GID学会認定医の活躍
章子の旅立ち
あの人は性同一性障害なんかじゃない。勘違いです!
家族に守られて育った岡遼平
乗りこえた苦労で、幸せも倍に
著者略歴

[担当からのコメント]
本書のテーマである性同一性障害や最近では同性婚の議論など、ジェンダーに関する問題は広がりをみせていますが、それらを考えるうえで問題を正しく理解するという点においては、未だ足りないことも多いのではないかと思います。そのための一助として、本書を多くの方にご活用いただければ嬉しく思います。

[著者略歴]
谷合規子(たにあい・のりこ)
神奈川県生まれ。横浜国立大学学芸学部卒。日本ペンクラブ会員。1982年、「薬に目を奪われた人々」で、第一回潮賞ノンフィクション部門受賞。1992年~2004年埼玉県新座市議会議員。著書に『なみだの選択』(1983年、潮出版社)、『危ないインフルエンザ予防接種』(1984年、社会評論社)、『フツーのおばさんが見た北朝鮮』(2010年、元就社)など。

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